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スポーツ医学・研究

 

日常生活におけるサプリメントの光と影

要旨

サプリメントの定義は明確ではないが、近年、健康志向もあって関心が高まっている。日本では健康食品という言葉がかなり昔から使用されている。いわゆる健康食品は特定保健用食品として効能を記載できるサプリメントと、一般食品として売られ、食品衛生法の適用しか受けないものが混在している。

市場には様々なサプリメントが出回っているが、サプリメントの安全性やサプリメント摂取の必要性が求められる。

市場には多くのサプリメントが氾濫し消費者が手に入れるサプリメントに関する情報には必ずしも正確な情報とは限らない。
市場では誇大広告も問題となり2010年、消費者庁は誇大広告の規制強化に本格的に乗り出すことを発表した。

サプリメントが健康増進、アンチエイジング目的で摂取される場合、個人の特質、必要量、摂取方法などを十分に配慮すべきである。

疾病を主にスクリーニングする血液検査以外に生体の機能の状態を把握する末梢血液分析、酸化ストレス度検査、自律神経機能検査などがあり必要サプリメントの指標検査として注目されている。

近年、アンチエイジングという名称が健康増進と同義に使用されてきているが、サプリメントもアンチエイジング効果を謳った製品が市場に急増してきている。

アンチエイジングに関する具体的なサプリメントとその効能や将来性を検討した。また、これまでの抗酸化サプリメント事情を覆すような学術論文も散見され改めてエビデンスの重要性が問われている。

キーワード:特定保健用食品、抗酸化サプリメント、抹消血液機能分析、自律神経機能検査、アンチエイジング
 
 

はじめに

 近年、健康志向やメディアの影響もあってサプリメントに対する関心も高くなっている。しかし、サプリメント摂取の必要性、安全性、摂取量、摂取方法などしっかり理解されて摂取されている消費者は少ない。科学的根拠がない誇大広告も目立ち、インターネットで容易にサプリメントの情報を得て購入することができるが情報の信頼性が乏しいものが少なくない。国内では医薬品(医薬部外品を含む)でないものは食品に分類される。サプリメント市場の現況、種類、安全性、摂取のための検査に注目した。
 
 

国内におけるサプリメントの現状

アスリートが疲労回復や競技パフォーマンス向上を目的としてサプリメントを摂取するケースが以前より注目されていたが、今では一般の消費者が疾病予防を目的としてサプリメント摂取するケースが急増している。食品に対して単なる栄養素の補給機能、味覚を満足させる機能のほかに体調調整に関する機能(三次機能)を求めるニーズが増加しその食品機能も多様化している。
市場には様々なサプリメントがあふれインターネットをはじめとするメディアでサプリメントと健康に関する情報が多く配信されている。しかし、質の悪いサプリメント摂取によって健康被害の報告も急増している。

中国から日本に個人輸入したサプリメントや薬事法未承認医薬品等を服用後に、健康被害(死亡、肝障害、バセドウ病様の甲状腺機能異常など)が発生した事例が、日本国内で多数報告されている。この場合、製品の質に問題があるというより違法な甲状腺末など薬剤がサプリメントに混入されていた。特にダイエット関連のサプリメントで被害が多くみられる。 

市場に存在する一般食品としてのサプリメントは機能などの表示が認められていない。保健機能食品は2001年、厚生労働省によって創設された新しい食品制度において 作られた食品の名称である。特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品を合わせたものである。(表1)一般的に国内では一般食品もこれらに加えて総じてサプリメントと称している。

サプリメントには栄養機能食品としてビタミン12種類(ビタミンB1、B2、B6、B12、ビタミンC、パントテン酸,葉酸、ナイアシン、ビオチン、ビタミンA、E、D)ミネラル5種類(鉄、カルシウム、銅、亜鉛、マグネシウム)、単体で摂取することもあるが総合ビタミンや総合ミネラルとして複数摂取することも多い。ヒトを対象にした研究の学術論文の情報を基にサプリメントの安全性や有効性が提示される場合があるが、市場にあふれているサプリメントの多くはこういった科学的根拠に基づく情報が具体的に得られていない状態で出回っている。1)

2010年12月6日 中日新聞 では、健康食品 誇大広告の規制強化、消費者庁の方針で悪質な事例は健康増進法に基づいて勧告し、業者名を公表する旨の記事が掲載された。消費者庁は2010年3月に550業者、11月も300業者に表示内容の修正を求める指導をしてきた。指導より厳しい勧告で業者名を公表するには、違反を証明する検査作業が必要となる。勧告は所管官庁が厚生労働省だった時も含め 1件も出されていない。しかし、誇大広告が後を絶たないため消費者庁は勧告できる体制の強化を決めた。また、新たに作成する指針は、「実験結果や体験談でも合理性を欠けば違反」といった注意すべき表現を列挙し被害防止につなげる。

この他、根拠なく商品を優良と思わせる表現を禁じた景品表示法を適用する規制強化も検討。同法は効果の有無の確認が難しい場合でも、表示内容に問題があれば改善を命じる措置命令を出せるためである。
同庁食品表示課は、「健康被害を防ぐために厳然とした対応をとる」としている。

健康増進法違反の恐れのある広告表現

  • 医薬品と同等の効果があると誤解させる
    「癌に効くといわれています」
  • 立証不可、未検証の誇大表現
    「誰でも15キロのダイエットに成功」
  • 効果と無関係な特許や架空の許可をかたる
    「国際特許成分が脂肪を除去」
  • 効果と直結しない表現
    「あの有名芸能人も愛用」
  • 学術論文などで証明されていない薄弱な根拠
    「○×教授の書籍に引用された」

表1 医薬品と食品の法律的区分
サプリメント摂取のための必要事項

1:科学的根拠に基づいた有効性
2:安全性
3:成分
4:摂取量
5:摂取方法
6: 摂取期間
7:摂取目的
などが理解されたうえで摂取されることが望ましい。

特定保健用食品は、一般に認識されている機能性食品の中でその保健の用途並びにヒトにおける有効性、適切な摂取量の設定・摂取に伴う安全性が、個々の食品で医学・栄養学的に明らかにされた食品に該当し、個別審査のうえ表示が認可される構造・機能表示である。

 

サプリメント摂取のための検査

サプリメント摂取において個人に適した種類、摂取量、摂取頻度、期間などの特定は困難である。摂取目的を明確にして、一定の指標を得ようとする試みはここ数年盛んになっている。

必要サプリメント特定のための検査として
1:血液検査
2:尿検査
3:抗酸化テスト
4:毛髪ミネラル検査
5:末梢血液分析
6:自律神経機能検査
などがある。

この中で1、2、3、4は全国的に多くの医療機関で行われているが、5、6の検査はほとんど行われていない。しかし、必要なサプリメントを決定するうえで今後注目を集める検査と考える。特に自律神経に対するアプローチは今後サプリメント摂取の検査として重要な位置づけになると考えている。

 

末梢血液分析 

末梢血液である、 1 Live Blood、2 Coagulation Blood を高倍率の顕微鏡で観察し分析、評価するシステム ブラッドフォード末梢血液評価法(BPBATM)などを使用して細胞の栄養状態評価、酸化ストレスの評価を行うものである。2)生体の酸化状態、生体の機能をリアルタイムに把握できるという利点がある。ブラッドフォード末梢血液評価法は、身体に活性酸素(ROS)の影響がどれほどあるのかを評価できる評価法である。3)末梢血液の評価は、High Resolution Blood Morphology Assessment TestsとCoagulation Morphology Assessment Tests がある。ブラッドフォード末梢血液評価法は、米国のBradford Research Institute の研究結果をまとめたもので、この研究は今なお続けられている。4)

評価マニュアルの冒頭には『この血液分析システムは、病気や病名の診断が目的ではなく(東洋医学で言うところの)未病の傾向とその栄養学的改善法について知ることが目的である。』『血液分析は、まだ研究段階のシステムであり、マニュアルの内容についても変更や補充が起こってくる可能性がある。』との記載がある。我々は、それを念頭において、生化学検査、摂取対象者への問診などと併用して使用している。米国では、International Academy for Advanced Microscopy (I.A.A.M) がトレーニングセミナーを毎年開催して、臨床で使用されている。

血液分析システムは、生きた血液形態評価、凝固血液形態評価共に分析シートに従い体系的に行う。
また、血液凝固パターンと異常所見の部位の相関図により、ビタミン欠乏、ミネラルバランス、生体内過剰活性酸素、ウイルス感染、消化・吸収機能状態、炎症状態といった具体的な身体情報が把握可能である。(図1)

末梢血液分析システムは、身体のどの部位にどれくらい活性酸素の影響があるのかを評価することができる費用対効果に優れた評価法である。活性酸素の生体内での発生状況は可溶性フィブリンを産生することにより凝固血液パターンで評価が可能である。

我々は、ブラッドフォード末梢血液評価法をブラッドフォード可変投影顕微鏡を使用して行っている。このシステムは ”生きた血液(Live Blood)“ 、”凝固血液(Coagulation Blood)“ を最大30,000倍の倍率で分析し評価するシステムであ。画像はビデオに取り込み、プリントアウトが可能である。この装置で映し出された画像所見を血液分析マニュアルに従い評価を行っている。
特に活性酸素の生体内での発生状況は可溶性フィブリンとの相関関係が証明されている。

図1.Correlation of Blood Morphologywith Segmental Abnormallities

1) 生きた血液分析(Live Blood Assessment)
被験者の右小指から血液を1滴、スライドガラス上に採取する。モニター上で30,000倍に拡大して 暗視野(Dark Field)、位相差(Phase Contrast)で赤血球、白血球、血小板、プラーク、コレステロール結晶、細菌、真菌、寄生虫などの像を解析する。(図2)(図3)生きた血液を分析することで細胞の栄養状態、免疫機能、代謝の状態、活性酸素の過剰発生状況などを把握することが可能である。(表2)

図2.血液中に認められるプラーク 図3.血液中に多数み認められる真菌
 Live Blood 評価表

2) 血液凝固分析(Coagulation Blood Assessment)
被験者の右小指から血液をスライドガラス上に6-7回に分けて採取して凝固後、明視野(Bright Field)で観察し各 Coagulation circleをチェックし評価する。(表3)体内の活性酸素発生状況をはじめ、様々な病気の原因となる因子が血液凝固因子に影響を与えているのがわかる。凝固パターンを分析することにより体内の活性酸素の過多が把握可能であり、活性酸素の発生状況は可溶性フィブリンと関係がある。(図4)定量評価は今後の課題であるが、血液分析の画像は写真、ビデオで取り込み保存が可能なため患者の活性酸素発生状態の経過を追うことが可能である。国内では普及している方法ではないが米国では代替医療専門医療機関が導入しているサプリメント摂取の指標の一つである。特に、Coagulation Blood Assessmentでは器官特異性がある酸化状態のパターンが判定される。(図5)また、最近では重金属の身体への影響や蓄積が各種検査で明らかにされているが、Coagulation Blood Assessmentでも Blood Coagulation circleの外縁の色調変化により重金属蓄積が考えられ、キレーションサプリメント投与の指標にも使用されている。(図6)

表3 Coagulation Blood 評価表

自律神経機能検査

心拍数やRR間隔変動(心拍変動)を測定することにより自律神経の影響、さらにそれを変化させる原因となっている精神的な安定度やストレスの程度などを類推することができる。RR間隔とは、心電図の波形で一番大きくスパイク状に出るR波と次のR波までの間隔のことである。このRR間隔変動をスペクトル変換したときの高周波成分(>0.15Hz)を「HF」、低周波成分(0.04~0.15Hz)を「LF」と呼び、HF成分は、心臓を支配している自律神経の副交感神経の活動のみを反映するとされている。また、HF成分は通常、呼吸性洞性不整脈に対応する。したがって、その周波数は呼吸の周波数に等しい。一方、LF成分は、交感神経と副交感神経の両方の活動を反映するとされている。そのため、HF成分とLF成分の比率が、交感神経および副交感神経の活動指標となるとされている。一般に、LF/HF比を交感神経の活動性の指標とし、HFを副交感神経の活動性の指標とする。

ヨーロッパ心臓病学会と北米ペーシング電気生理学会(The European Society of Cardiology and The North American Society of Pacing and Electrophysiology)によって提唱された短時間心拍変動解析のアルゴリズムを採用しているソフトウエアを組み込んだ 心拍変動解析システム Heart Rhythm Scanner(Biocom社)を使用して右耳垂部にPhotoplethysmography(PPG)モニターを装着し5分間の心拍変動を測定し解析を行う。PPGモニターは、光源とフォトセル(光をエネルギーに変換する)からなる変換機上の両方に耳垂部が接するように置くことによって機能し赤外線の光線はフォトセルに向かって発射される。耳垂部の中の血管の血液流量変化は心拍間隔に関連しているためPPGモニターにより脈波が測定可能となり心拍変動のデータを得ることができる。

データ摂取後、解析された自律神経機能の各パラメータ、バランス、コメントなどの評価表が表示されるシステムである。(図7)
自律神経機能を定量評価でき非観血的検査で導入しやすい。最近ではストレス解消のため自律神経機能に影響を及ぼすサプリメント摂取に注目が集まる中、これまで全く自律神経機能評価がされていない。自律神経機能に影響を及ぼすと言われているサプリメントでその影響や効果が自律神経機能定量評価において学術的に検討された事例はこれまでほとんど報告がない。
心拍変動解析システムにより自律神経機能へのサプリメントの影響も評価できると考える。

疾病の治療を目的として医薬品が使用されるが、サプリメント摂取は健康増進、疾病予防を主たる目的としている。このため、自律神経機能評価はストレス状況を明確に表しサプリメント摂取において有益な情報と考える。5)必ずしも疾病がなくても自律神経機能が低下したりバランスが乱れていることがある。現在では、自律神経と免疫の関与も指摘されており自律神経への関心が高まっている。現在、我々の教室では自律神経に対する運動負荷、音楽、鍼刺激など各種介入試験を実施しているが各種サプリメント摂取による自律神経への影響も今後の研究で期待される。自律神経へのサプリメントの効果が定量評価できれば、アスリートのコンディショニングやストレスマネージメント、日常生活での容易なメディカルチェックなど多くの用途が考えられる。6)、7)自律神経と関係がある疾病や体調不良は多いため最も注目を集めるサプリメントがこのシステムで評価される可能性がある。

図7 5分間の心拍変動解析によりデータ分析が行われた自律神経機能定量評価表

近年、注目を集めるサプリメント

・ファイトケミカル(ポリフェノール、カロテノイド・・・)
・プロバイオティクス、プレバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌・・・)
・マリンビタミン(アスタキサチン、ドコサヘキサエン酸・・・)
がある。
 

ファイトケミカル (表4)

・植物由来の化合物全体
・ポリフェノール、カロテノイド、テルペノイド、バニロイド・・・
・ファイトケミカルの機能発現に関する分子機構の解明が進展している
 

プロバイティクス、プレバイオティクス

プロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌)
腸内フローラを改善することにより宿主細胞に有益な効果をもたらす、生きた細菌を食品に添加したもの

単鎖脂肪酸(酪酸、プロピオン酸、酢酸など)を産生して腸管内を産生することにより、病原微生物の増殖を抑制し、腸管内の環境を改善する
*トクホの素材として用いられているものは乳酸菌(Lactobacillus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium)に属するもの

プレバイオティクス(オリゴ糖、食物繊維)
腸内に棲息している菌のうち、有用菌のみの増殖を促進したりその代謝を高めることにより宿主の健康に有利に作用する難消化性の食品成分。代表例はオリゴ糖、食物繊維であり、オリゴ糖は、腸管内の消化酵素で分解されない少糖類でありもともとはビフィズス菌の増殖を促進する因子である。食物繊維あるペクチン、グルコマンナンも消化酵素では分解されず腸内細菌によって分解される。8)

プロバイオティクス、プレバイオティクスの作用
・腸管内が酸性環境になると腐敗菌や有害菌の増殖が阻害される。
・腸の蠕動運動を活発にし便通を改善するといった整腸作用
・抗炎症作用
・抗アレルギー作用
 

マリンビタミン

・アスタキサンチン
・エイコサペンタエン酸(EPA)
・ドコサヘキサエン酸(DHA)

アスタキサチン
・海産物の筋肉や体表に多く含まれる
・一重項酸素の酸化反応、過酸化脂質の生成を抑制
・LDL酸化防止
・糖尿病合併症の抑制
・眼疾患の抑制と眼精疲労改善
・抗疲労作用
・抗肥満作用

エイコサペンタエン酸(EPA)
・赤血球変形能が増加することで血栓症、高血圧の抑制
・血清脂質の改善
・各種血栓性疾患での亢進した血小板凝集の是正

ドコサヘキサエン酸(DHA)
・老人性認知症の改善効果
・COX阻害によるアレルギー、炎症の抑制
・血漿コレステロールの低下作用
・大腸がん抑制作用

表4.ファイトケミカルズに期待されるおもな機能

アンチエイジングとサプリメント

老化を改善させるよりも老化危険因子改善効果がサプリメントから期待できる。老化としては、1:血管、2:筋肉、3:神経、4:ホルモン分泌、5:骨のそれぞれの年齢が考慮される。血管年齢は、動脈硬化の危険因子を補正するサプリメント摂取により改善する可能性が指摘されている。9)カルシウム、マグネシウム、カリウム、GABA摂取が推奨されている。特に衰えを感じるのは筋肉年齢であり、逆に筋肉年齢は比較的容易に回復させることが可能である。特にタンパク質やアミノ酸は筋肉の主要構成要素であるため適正な摂取により筋肉年齢を回復するには効果的である。神経年齢は神経機能に好影響をもたらすレシチン、フォスファジルセリン摂取が推奨されている。認知機能低下を遅延させるEPA、DHA、メラトニンも注目が集まる。ホルモン分泌には、大きな影響を及ぼすサプリメントはないが、イソフラボンのエストロゲン様作用、睡眠の質の向上を目的としたメラトニン摂取が注目を集めている。骨年齢の回復には骨の成分としてミネラルが重要である。マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどの微量元素も必要である。
 

抗酸化サプリメント

最近のサプリメントの動向の一つに抗酸化サプリメント市場の活況がある。アンチエイジングという名称が一般的になったと同時にエイジングの活性酸素仮説が注目を集め抗酸化サプリメントが市場に氾濫している。抗酸化仮説を支持するエビデンスも存在するが、 Proceedings of Academy of National Science 2009年5月号に 抗酸化物は運動の健康増進促進作用を失わせるという論文が掲載された。10) 1)また、他にもビタミンA、ビタミンEの摂取は死亡率を上げると報告している2007年 JAMAに掲載された論文もある。11)2)重要な点は、抗酸化サプリメントの選択に関して身体状況を考慮して摂取することでありやみくもに抗酸化サプリメントの摂取は確実なエビデンスが存在しない限り勧められない。
 

抗癌サプリメント


抗癌サプリメントの宣伝の中に、「○○学会で発表」、「○○雑誌に報告」、「特許出願中」などという表現が記載されることがある。こういった表現は学会での発表が効果を学会で認められたと錯誤させる手法の場合もある。学術論文の医学誌への掲載も効果を認知されたわけでないにも関わらず宣伝を目的として利用される場合もある。 

あるサプリメントが「特許を取得」したというと特許を申請、取得をあたかも効果を保証したものであるとの錯誤へ一般消費者や癌で不安な家族や本人までも導く手法となっている場合もある。特定のサプリメントで癌が治ったとする体験談主体の本は「バイブル本」と称される。キノコやサメ軟骨などの特定のサプリメントを取り上げ、「末期がんが治った」「医者にかからなくてもがんが治る」などと誇大な見出しで訴えるのが特徴で、バイブル本の実態は、出版社と健康食品販売業者がタイアップして出した宣伝本である。直接商品名を挙げて効果を訴えると薬事法違反になるため、商品名は記載せずに、巻末や本に挟み込んだ紙に連絡先を記載しておき、本の内容で興味をもった患者へ商品購入へと導く商法である。この書の大部分は、ゴーストライターが関与し文章を構成し、医師は単純なインタビュー取材を受けるだけで内容を事前に知らされていないことも多い。  

抗癌サプリメントの体験談で良いことを述べて商品を紹介している場合、「これは個人の感想で薬効を説明しているのではありません」という断りを記載しておけば、薬事法にも健康増進法にも抵触しないと考えられているある種のサプリメントが癌に効くと思い込ませる合法的な手法を考える バイブルビジネス、抗癌サプリメントビジネスが存在する。特に末期癌患者やその家族は、手術、放射線、抗癌剤以外の治療として免疫療法や抗癌サプリメントにかける期待は大きくその思いをビジネスに活用したものもある。代替療法の一つとしてサプリメントが注目を集める中、おそらくすべてのサプリメントにおいて抗癌サプリメントの売り上げに占める割合は単価から考えても大きいと予想される。

本来のサプリメント摂取の目的とは異なるグレーゾーンが存在することを消費者も医師も認識する必要がある。

最も抗癌サプリメントとして認知されている一つに アガリクスがある。一般にブラジル原産の和名カワリハラタケ(Agaricus blazei Murril)の事をアガリクスと称し、キノコを原料としたサプリメントとして広く販売され以前は、非常に高価であったが、1990年代に栽培方法が確立され低価格でも販売されるようになった。このキノコはブラジルより種菌が日本に導入され、1970年代後半より国内で人工栽培され、当初はヒメマツタケとして販売が始まった。その後、複数の研究機関から抗腫瘍効果(免疫療法)や血糖値降下作用等が報告され、注目が高まった。12) 1990年代中頃より、いわゆるアガリクスブームが始まり、サプリメントとして乾燥キノコや抽出エキス等が販売されるようになり、300億円以上とも言われる巨大な国内市場を形成。「アガリクスによって『癌が治った!』」というような本も多数出版されていたが、ほとんどの本がバイブル商法で用いられる「バイブル本」であり、問題とすべき点が多い。原料は子実体と菌糸体のどちらが、抽出方法は酵素処理法と熱水抽出法などあるがメーカーにより異なる。また、アガリクスと称して売られているものの中にはハラタケ属のキノコであってもカワリハラタケでないものも多数流通している。

2003年以降、日本の国立医薬品食品衛生研究所が国内で流通するアガリクス製品(キリンウェルフーズの「キリン細胞壁破砕アガリクス顆粒」、サンドリー(現:SSI)の「仙生露顆粒ゴールド」、サンヘルスの「アガクリスK2ABPC顆粒」)について検査した結果、2006年2月13日に麒麟麦酒(現:キリンホールディングス)子会社であったキリンウェルフーズ(現:ヤクルトヘルスフーズ)が発売する「キリン細胞壁破砕アガリクス顆粒」について、ラットに対する中期多臓器発がん性実験で、発がん作用を助長・促進する癌プロモーター作用が認められ、販売停止と回収を要請した事を発表。同社は、アガリクスを含む全製品の即日販売停止と回収を決定した。多くのメディアに報道され話題になった。これらの報道後、抗癌サプリメントとしてのアガリクスの市場での販売は急速に終息したかに思われたが、現在では息を吹き返したかのように広告があふれている。いずれにしても科学的根拠を持たない抗癌サプリメント市場は、現代医療で見放された末期癌の患者が存在する以上、縮小傾向にはないようである。サプリメント摂取は本来、欠乏状態に対する補充という点では勧められるが、健康増進目的としては必ずしもエビデンスが存在するとは限らない。サプリメント摂取の適正評価には、メタアナリシスを視野に入れたデータ築盛が必要である。13)
 

参考文献

1)寺屋純二:健康食品(サプリメント)の活用と安全性. 日本病態栄養学会誌 8(4), 324, 2005
2)末武信宏、野村和生、橋本隆:高解像度顕微鏡を使用した血液分析システムの臨床的応用.日本美容外科学会誌 Volume 40 No.1 :10-15,2003
3)Bradford, Robert W.: The Study of Reactive Oxygen
Species (ROS) and Their Metabolism in Health and Disease. Oxidology :719、1997
4)Bradford, Robert W. & Henry Allen:Bradford-Allen Coagulation Pathway & Altered Coagulation Components in the HLB Blood Test (1998,2001)
5)Sawada, Y: Heart rate variability, Is it available in psychophysiological research. Japanese Journal of Cancer Research, 26, 8-13、1999
6)Nobuhiro Suetake, Yukiko Morita, Daichi Suzuki,et al:Evaluation of autonomic nervous system by heart rate variability and differential count of leukocytes in athletes. Health.Vol.2,No.10:1191-1198,2010
7)Hedelin, R., Wiklund, U., Bjerle, P., et al. Cardiac autonomic imbalance in an overtrained athlete. Medicine and Science in Sports and Exercise, 32(9), 1531-1533、2000
8)清水誠、戸塚護:健康機能食品と腸管機能. Anti-Aging Medicine 12:51-55、2008
9)米井嘉一:アンチエイジングドックの結果からみたサプリメントの処方例.Anti-Aging Medicine 24:78-81,2010
10)Ristow M, Zarse K, Oberbach A,et al:Antioxidants prevent health-promoting effects of physical exercise in humans. Proc Natl Acad SciUS A. :106(21):8665-70、2009
11)Bjelakovic G, Nikolova D, Gluud LL,et al:Mortality in randomized trials of antioxidant supplements for primary and secondary prevention: systematic review and meta-analysis. JAMA 297:842-857、2006
12)海老名卓三郎:担子菌アガリクス子実体抽出物の抗腫瘍効果-担子菌カワラタケ菌子体抽出物PSKとの比較. Biotherapy 17:33-38、2003
13)末木 一夫:抗酸化栄養素サプリメントによる1次予防および2次予防のための無作為化臨床試験における死亡率への影響、ビタミン 81(8):394-395、 2007

 

順天堂医学. 2011.57
P.100~108

 

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