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2012年9月22日 土曜日

ロンドンオリンピック活躍アスリートを医学する!!


ロンドンオリンピック活躍アスリートを医学する。

―― ロンドンオリンピックを終えて

指導させていただいた選手からいただいた日本代表選手に贈られるピンバッチロンドンオリンピック終了してスポーツへの関心がさらに高まりました。
スポーツは感動を与え、アスリートの活躍する姿は私たちに勇気を与えてくれます。
オリンピックは、他の世界大会とは比較にならないほどの注目度ですね。
まさしく国家がスポーツで戦う世界的大イベントです。

ロンドンオリンピック出場、日本代表選手 お疲れ様でした。

成績の如何にかかわらず日本代表として日の丸を背負って世界と闘われたアスリートたちの想いと、努力は素敵です。
今回の日本人最高の快挙は、ボクシングミドル級金メダルを獲得された村田諒太選手だと思います。


48年ぶりの金メダルよりミドル級という世界の壁を乗り越えての頂点は、陸上男子100Mでメダルを獲得するほどの歴史的偉業です。世界で最も層が厚いと言われている階級での頂点はまさしく歴史的偉業ですね。
世界王者を数多く輩出する日本も 歴史的に重量級でのオリンピックのメダルは村田選手ただ一人。いかに世界の壁が高いかがわかります。


3連覇を達成した女子レスリング、伊調馨選手吉田沙保里選手。ウエイト制の競技で8年以上世界のトップに君臨することは奇跡ですね。
3連覇は素晴らしいのですが、体重を8年以上維持する困難さは医学的に考えても驚異的です。基礎代謝が加齢とともに低下してウエイト維持が年々、困難になるのです。

メダル獲得数38個もスポーツ予算が少ない中、素晴らしい結果です。
日本人の優秀さを世界でアピールできたのではないでしょうか。
ただし、金メダルの獲得数が7個と目標からは大きく少なくなってしまいました。
これは男子柔道の金メダル獲得数がゼロという結果も影響しています。

 

―― 3連覇 伊調馨選手活躍の奇跡

伊調馨選手のロンドンオリンピックの壮行会にて今回、不思議な縁がありました。
壮行会へ知人のお誘いで出席させていただき、一緒に記念撮影と短い言葉でしたがお話をさせていただいた、伊調馨選手。
彼女が左足首靭帯損傷の重傷を練習中に負ったにもかかわらず、圧倒的な強さで金メダルを獲得したことに関して、医学的コメントをスポーツ医学を研究する専門医の立場からコメントさせていただく機会をTBSからいただきました。

『N スタ(東海エリアではイッポウという番組)』で5分ほど特集が流れ、コメントさせていただきました。
金メダル獲得の当日朝、ニュース担当のディレクターからお電話があり、当日の収録、決勝の様子をビデオで供覧しながらの分析になりました。

試合前の練習で左足首 捻挫で外側側副靭帯3つのうち1本完全断裂、1本部分断裂の重傷。
医学的には外側側副靭帯が断裂している場合、歩行も困難なほど。レスリングがまともにできる状態ではなかったはずです。
腫れや痛みはかなり強かったはずです。
伊調選手は何事もなかったかのように決勝まで圧倒的な強さで勝ち抜きました。
決勝も負傷した左足首で全体重を支え、相手のタックルを耐えてバックに素早く回ってポイントを獲得しました。

医学を超越した何か!が彼女に宿ったのかもしれません。
伊調選手の経験、努力の集大成が、怪我を克服させたのでしょう。

怪我をしたことで開き直って思いっきり闘うことができた...プレッシャーから解放され、副交感神経機能が高まって集中力が高まり全身が左足首をカバーするほどスムーズな連動が可能となったのでしょう。
3連覇の彼女の活躍を医学的に分析しコメントする機会をいただけて光栄でした。

 

―― 科学的分析がメダル獲得をサポート

女子バレーの銅メダルも快挙ですね。
快挙の裏側には徹底的なデータ分析という アナリストの活躍がありました。
サーブやレシーブ、スパイクの連携と相手の動きを科学的、統計的に綿密に分析して対戦相手の動きや攻撃パターンを読み取ってセッターが中心となって戦略を練っていたのです。まさしくチームと裏方、コーチやアナリストの総合力で獲得したメダルです。
科学的な裏付けがアスリートを支えていたのですね。

素晴らしい選手の活躍もありましたが、とても残念で、疑問に思うこともありました。

 

―― 自律神経が明暗を分けた柔道男子と競泳チーム

柔道男子60キロ級 平岡拓晃選手銀メダル獲得したにも関わらず賞賛どころか、コーチが表彰式にも立ち会わず宿舎へ帰ってしまうことが・・・
うなだれ周りの関係者に謝罪する平岡選手の姿を皆さんはどう思われたでしょうか?
金メダル以外はメダルでない...国技の誇りはわかりますが、選手はかわいそうです。
休みなく行われる代表強化合宿、怪我も満足に治療できない環境、プレッシャー・・・自律神経はズタズタだったのではないでしょうか。

篠原監督は科学的分析やトレーニング法より、根性や日本柔道の伝統を重んじ、耐え抜く柔道を選択しました。
JUDOには対応できていなかったことは誰の目からも明らかです。
絶対金メダルを獲得するというストレスは、極度の緊張を生み、交感神経が異常な緊張をして副交感神経機能が抑制されかえって集中力が低下し筋肉が思うように動かなくなります。
筋肉に十分な血流が供給されなくなり、継続したパワーが出せなくなってしまうのです。

医学的に見れば、選手を試合直前まで苛め抜くのではなく、むしろリラックスさせることが金メダル獲得のカギだったと考えます。
競泳日本代表の和気あいあいと競技を楽しむ姿と正反対です。
競泳日本代表はメダルが獲得できない選手も輝いて見えました。
結果はこの点にあったのではないでしょうか。


私どもの研究で、アスリートは極度の緊張の中では交感神経優位になり副交感神経レベルが低下して競技パフォーマンスが低下することがわかっています。
セル・エクササイズのような副交感神経レベルをアップさせるトレーニングやコンディショニング法を柔道男子日本代表選手が導入していたら結果は変わっていたかもしれません。
いや、変わっていたはずです。

怪我を治す時間もなく世界ランキングを上位に保つため無理して海外試合にも出場。つまりアクセル全開の交感神経緊張状態がいつも続いていたのです。
これでは肝腎のオリンピックという大舞台でリラックスすることは困難です。
金メダルのプレシャー、篠原監督の睨みの緊張・・・
パフォーマンス向上になる副交感神経を高める必要がある大切なオリンピックの試合が、副交感神経レベルを下げる場になってしまったのでしょう。
今回のオリンピックへ臨むための篠原監督の精神論に強い批判が集まっているのはこういう背景からです。

精神論は根性や緊張することではありません。
緊張の中でリラックスすることです。
自律神経的観点からみれば結果は始まる前から決まっていた...ということになってしまいます。


2004年、アテネオリンピックへ日本陸上史上初の7種競技でオリンピック選手を、自らのチーム(さかえクリニックTC)から輩出しました。プライベートなチームからのオリンピック日本代表選手輩出は、史上初のことでした。
私は個人として、陸上に強い想いを持っています。

陸上に長年携わって、陸上関係者、陸上アスリートのコンディショニング、ケア、治療を長年にわたって行ってきたこともありますが、究極のパフォーマンスを要求される陸上はとても魅力がありますし、オリンピックの華とも言えるでしょう。

 

―― 男子マラソンの光と影

陸上関係者でもある私ですが、男子マラソンの結果は感動と疑問がいり交った思いでした。
いや、むしろ、憤りすら覚えました。

レース前は、あるマラソン選手はメダルの期待も!画期的な新しいトレーニング法を導入!カリスマトレーナーから指導を受け能力アップなど多くのマスコミがこぞって持ち上げていました。

 マラソン選手が ロンドンへカリスマトレーナーを招へいしてレースに備えたとも大きく報道されていました。
カリスマトレーナーの女性が マラソン選手の筋肉のコンディション指導、チェックを行ったとのことですが、アスリートのコンディションは外から見たり触っただけでは判断できません。



アスリートのコンディショニングに有用な高解像度顕微鏡システム

身体の動きは確かに大切ですが、レース直前は医学的コンディショニングが最も大切です。
レース前に体の重心や筋肉のバランスの状態を確認することは、医学的なコンディショニングとしては無意味です。
直前に確認するべきではなくトレーニング時に確認して確定すべきことだからです。
マラソン選選手は、カリスマトレーナーに傾倒するあまり肝腎なチェックやコンディショニングの正しい確認(医学的な確認)を怠った可能性があります。

疲労が抜けているか、睡眠、汗、食事、体温、脈拍・・・
自律神経の状態チェックが最も大切なことです。もちろん、可能であれば電解質チェックをはじめ血液検査ができるに越したことはありません。

私なら、直前には自律神経レベルや状態の確認を優先し、動きや筋バランスはあえて触れません。
直前に走り方を変えては身体全体のバランスをかえって乱し、大きな負荷がかかります。

カリスマトレーナーはいつも自分の体験や勘だけで指導を行っているため、理論的な配慮やトップアスリートの身体の仕組みが十分理解できていなかった可能性があります。
彼女のブログには自信たっぷりに、トレーナーとして直前まで指導をしたことが書かれていましたが、私は強い疑問を持っていました。今回のマラソン選手の事例は、私だけでなく多くの陸上指導者、スポーツ医学の共同研究者である順天堂大学医学部 小林弘幸教授も全く同じ考えでした。

マラソン選手は、はたしてカリスマトレーナーが伝えたように万全だったのか・・・疑問です。
マラソン選手のトレーニング法、コンディショニング法の失敗だったと考えます。

客観的、科学的アプローチをしなければ、世界レベルの競技会で安定した結果を得ることは困難です。
カリスマトレーナーがいかに素晴らしい指導法を行っても 理論が科学的に分析されなければ客観性はありません。
カリスマトレーナーの経験や勘だけで世界と闘うには無理があります。


メディアの放映はいつも目新しいこと 規格外を面白く誇大に取り上げますが、今回ばかりは結果が全て。と伝えたいです。
そうでなければ 地道にアスリートを指導されているトレーナーや陸上指導者の皆さんがうかばれません。
マラソン選手がメダル獲得も入賞の可能性も客観的に判断しても極めて低かったはずです。


オリンピックと国内のマラソン大会とは、規模もレベルも参加選手の層や意識も大きく異なるということです。
陸上指導やトレーニングは本当に地道で過酷です。
10年以上、陸上クラブチームを運営させていただき、数多くの日本代表選手のサポートをさせていただく機会に恵まれた自分ですらまだまだ、手探りの状態です。

面白おかしくトレーナーをもてはやす報道も問題ですが、自分の経験や体験だけでの指導法も問題です。
お互いにメディア露出で経済的メリットもあったかと思いますが、アスリート指導は、客観的、科学的、理論的であるべきです。

今回のこのマスコミの取り上げ方は、加圧トレーニングを行う芸能人がダイエットに成功したとか 若返ったとか、成長ホルモン増加の一方的な科学的理論?を誇張してPRする取り上げ方に似ています。


医学的根拠に乏しいトレーニング法をリスクを隠して誇大広告をする。目新しいからメディアも飛びつく。メリットを強調した一方的な報道になる。タレントや芸能人が行っていることを過剰に強調する。
私が診察した患者様で加圧トレーニングでむしろ交感神経が緊張状態に陥りダイエットどころか、かえって異常な食欲が更新し体重増加の事例も少なくありません。

成長ホルモンという一つだけの視点で全てダイエットに結び付ける医学的根拠に乏しい売り文句に騙されてはいけないのです。
医師の70%以上は、加圧トレーニングによるダイエットに反対しているにもかかわらず。
アスリートの努力同様、トレーナーや指導者は地道にコツコツと。


アスリートのコンディショニングに有用な抗酸化ケアシステム・エアナジー。アテネ五輪から国内で始めて筆者がオリンピック日本代表選手に携帯させた。
アスリートのコンディショニングに有用な抗酸化ケアシステム・エアナジー。
アテネ五輪から国内で始めて筆者がオリンピック日本代表選手に携帯させた。


―― 真に結果を出すものとは

ロンドンオリンピックの事例で、科学的な根拠を持ったトレーニングやコンディショニング法が医学的根拠を持たないカリスマトレーナーの勘や体験指導に優ると見直されることを期待しています。
私ども専門医が医学的根拠があるコンディショニングやトレーニングを普及させる義務があると考えています。


レース前には全く紹介もされなかった 中本健太郎選手の6位入賞の大活躍。
彼のレース後の言葉、やってきたことは間違いじゃなかった・・・素敵なコメントですね。
間違いじゃなかったからこそ 誇大報道もされず結果が出せたのでしょう。

メディアも一生懸命頑張るアスリートを適正な視点で報道して応援してほしいと思いました。
ロンドンオリンピックで私も多くを学び、多くの感動をいただくことができました。
日本代表選手の皆様、感動と勇気をいただくことができましてありがとうございました。

微力ですが私どもも、多くを犠牲にして世界と闘うアスリートを支援させていただけましたら幸いです。

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2012年9月10日 月曜日

加圧トレーニングに関しまして


―― 加圧トレーニングの効果について

トレーナーとしてアスリートを指導する機会が多いため、加圧トレーニングに関する質問をよく受けます。

まず、加圧トレーニングの効果があるかないか。
結論から言って「トレーニング効果は期待できる。」です。しかし、ウエイトトレーニング、サーキットトレーニング、アクセラレーショントレーニング、・・・すべてのトレーニングが基本的には効果が期待できます。

加圧トレーニングが他のトレーニングに比較してトレーニング効率や安全性、簡便性、コスト、など総合的にトレーニングとしていかなる位置づけにあるかは、まだまだ発展途上であり誇大広告、PR先行で加圧ビジネスなるものが存在し、医療関係者の中でも十分な安全性や効果検証がされていないのが現状です。
確かに加圧トレーニングに関します論文が散見されますが、循環器専門医や自律神経研究者からのアプローチをしたものがほとんどなくこれほど有名になったトレーニングの割には学術的アプローチが現況では少ないような気がします。

数日の講習会で42万円を支払えばインストラクターとして指導に当たっておられる方も少なくないようですが、


トレーナーとしてアスリートや基礎疾患を抱えた方を指導するには長年の経験と運動生理学や解剖学、トレーニング理論を熟知されている必要があります。
 

―― 加圧トレーニングの現状

現況はいかがでしょうか?
エステサロンと併設して美肌、ダイエットプログラムと称して高額な費用を請求したり、最高のダイエット法などと心臓に負担をかけてはいけない中年の方へトレーニングを勧めたり・・・
トラブルの相談も少なくありません。
広範囲のうっ血による皮下出血、突然の失神、トレーニング後の吐き気と嘔吐。
ダイエット逆効果。


自律神経の機能の面からは、必ずしもメリットとは言えないようです。
トップアスリートの指導者の多くは加圧トレーニングには反対の立場をとり、医師も反対の立場をとる方が少なくないのが現状です。
私もトップアスリートが導入するトレーニングとしてはほとんど意味はないもしくは、リスクもありうると考えます。

 

―― 問われる加圧トレーニングの特許問題

最近驚くべきことに、特許無効審判事件が明るみになり加圧トレーニングの特許問題が浮上しています。
高額なライセンスビジネスを展開する加圧トレーニングがもし特許無効になれば大問題です。
特許が本来取得できないトレーニング法でライセンス料を高額に搾取して加圧ビジネスなるものを誇大広告を出して、医療やリハビリまで展開した...と。

審判では加圧トレーニング開発者、および運営者が、加圧トレーニングは医療やリハビリには効果があるとは伝えていない、また勧めていないと明言された情報もあります。
アンチエイジング研究では有名な医学部教授が、医療、リハビリで画期的なトレーニング法と根拠なく某週刊誌の自身のコラムにおきまして手放しでほめたたえたケースもありますが、慎重に・・・と言うのが専門医として正しい表現と考えます。

また、安全性を強調する加圧トレーニングですが、小さな子供や高齢者、トップアスリートが100%安全と言い切って受けられるものではないことは医師であればだれでも考えることです。

不整脈、血栓症、重度の糖尿病患者、心筋梗塞後の患者、悪性腫瘍の既往歴がある患者、ホルモン異常の患者、感染症の患者にもよいのでしょうか?
上記の患者が重度であれば前もってわかりますが潜在的リスクを抱えた患者様にはやはり慎重に行うべきですね。

加圧トレーニングが成長ホルモンと直接的に結び付け、成長ホルモンが血中に増加するから若返り筋肉肥大も起こる・・・と結論づけ = ダイエット、健康とPRするにはあまりにも短絡的ではないでしょうか?
神経系統への影響や筋肉との連動性はどうなっているのでしょうか?
まだまだ未知な部分もありますね。

 

―― 加圧トレーニングの今後

加圧トレーニングは、トレーニングの一部として適応や手法を考えれば大きな可能性が期待できるかもしれませんが、あまりにもビジネス先行、質の低いトレーナーによる強引な営業、医療関係者の知識不足、特許の問題など 広く普及するには解決すべき問題点があります。

芸能人がやっているから・・・の謳い文句で始まった加圧トレーニングもさらなる見直しを図る時期に来ているのではないでしょうか。

現況では、「加圧トレーニングは慎重に、他にも優れたトレーニング法が存在します。」とスポーツ医学にかかわる専門医としてお伝えします。

また、多くの医師が反対しているように
絶対にダイエット法としてはお勧めできません。
トレーニングやエクササイズを理解していない経験も少ない名前先行のアンチエイジング専門医ではなく、良識ある医師による検証や研究が待たれます。

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