最新スポーツ情報
2012年4月22日 日曜日
静的ストレッチの危険性
長年にわたって私は静的ストレッチのリスクや無効性を訴えてきました。しかし、実際のスポーツ現場では未だに多くの指導者が当たり前のように長時間にわたる準備運動としての静的ストレッチを子供やアスリートに強要し、誰もが疑問を抱かずに黙々とストレッチに励んでいます。静的ストレッチの有害性を指摘する学説があることも知ってもらいたいと思います。
●静的ストレッチの効果に疑問
準備運動として静的ストレッチを行えば柔軟性が増加し怪我の予防につながり競技パフォーマンスが向上する。スポーツ後のケアとして静的ストレッチを十分行うと疲労回復が促進され筋肉痛の予防につながります。
従来から考えられてきたこれらの静的ストレッチ信仰は全く根拠がなく 逆にアスリートや子供たちの身体を蝕む・・・決して行ってはいけない行為なのです。
股割りを長時間行うことが当たり前。
子供たちが泣こうが、わめこうが、蹴りを上達させるために股割りを行うのは必要なこと――。
是非、今回の私の解説を読んでいただき この考えを改めていただきたいと考えます。
ちなみに一切、股割りを行わない 前屈が-20センチの 80歳代の身体の固さの私(柔軟性が全くありません。)でも今でも空手の有段者やプロのキックボクサー同様のはいキックや上段蹴りを無理なく行えます。
柔軟性が高いから蹴りの破壊力が増す・・・ことは今や過去の古い根拠がない理論です。
学校の教師をはじめ多くのトレーナーやアスリートたちは科学論文や医学論文を読む機会がほとんどありません。多くのアスリートたちは近代科学から取り残された環境で日夜 トレーニングに励んでいるようです。
本当に静的ストレッチは効果があるのかを検証した論文があります(Effects of stretching before and after exercising on muscle soreness and risk of injury: systematic review. BMJ. 2002)。
この論文はこれまでの8つの論文をまとめたレビューです。対象人数が最大のものは17~35歳の兵役でのトレーニング生1,538人、同じく1,093人のものが含まれています。
調査では毎日のトレーニング前後に5~10分の準備運動(ストレッチング)をする群としない群に分け、80日間のトレーニング期間の筋肉痛、ケガの状態が評価されました。
筋肉痛は0から10までの11段階で評価されました。ケガは捻挫、疲労骨折、骨膜炎、アキレス腱炎、前脛骨区画症候群(前脛骨筋、長指伸筋、長母指伸筋とそれぞれの筋膜および前脛骨区画に関与する神経と血管に、何らかの原因によって障害が生じ、そのために組織内圧が亢進し、前脛骨区画内の循環系に不全が起こり、筋・腱・神経組織に機能障害や壊死が生じるものである)を対象とされました。
結果は、筋肉痛のスコアは両群で同じでした。上の図は80日間のトレーニング期間にケガをしなかった者の割合で、赤は1998年の調査でのストレッチング施行群、青は非施行群、水色は2000年の調査でのストレッチング施行群、オレンジは非施行群です。1998年、2000年の調査とも両群でケガが起きる割合は同じでした。
他の6つの調査でもほぼ同様の結果がでています。
運動前に準備運動(ストレッチング)をしても筋肉痛やケガを防ぐことはできません。筋肉痛になるときはなる、ならないときはならない、ケガをするときはする、しないときはしないのです。
それでは実際のアスリートへのストレッチはどうでしょうか?

●最新情報では?
Pre-Tennis Stretching常識を覆す静的ストレッチの最新情報です。(文責:スポーツ科学情報部会 高橋)
Coaching & Sport Science Review - Issue 43, December 2007
テニス選手のためのストレッチに関する最新情報
Pre-Tennis Stretching
Mark Kovacs and T. J. Chandler ( Jacksonville State University, USA)
<はじめに>
テニスは、大きな力やトルクの発揮をともなう中・高強度の運動が繰り返し必要とされるスポーツです(Kovacs、 Chandler、 & Chandler、 2007)。選手はこれらの大きな負荷にともなって生じる怪我を未然に防ぐために、練習や試合の前に時間をかけてウォーミングアップを実施します。
従来から実施されているウォーミングアップは、主に、テニスで頻繁に使われる筋肉を中心に静的ストレッチするというものです。静的ストレッチは、パフォーマンスを改善したり怪我を予防したりするものとして、何10年にもわたって、指導現場で実施されてきました。1980年代と1990年代中頃の研究論文(Shellock & Prentice、 1985; Smith、 1994)では、静的ストレッチはウォーミングアップとして良い効果をもたらすことが報告され、多くのコーチはスポーツ医・科学者のアドバイスに従って、選手に静的ストレッチを実施させていました。しかし、最近の研究ではウォーミングアップで静的ストレッチを行うと、実際には運動のパフォーマンスが低下することを報告しており、従来のアドバイスを修正していく必要性があることを示しています。
<パフォーマンス>
1960年代の研究論文(DeVries、 1963)では、ウォーミングアップで静的ストレッチを実施しても、その後の100ヤードダッシュの結果に改善がみられなかったことを報告しています。それにもかかわらず、各種スポーツ指導現場では、未だにウォーミングアップで静的ストレッチを行うことが常識になっており、静的ストレッチはパフォーマンスを改善するもの、という考え方が常識となっています。
しかし、実際には静的ストレッチは、筋力、スピード、パワーといったパフォーマンスを低下させるということが多くの研究結果から明らかになっています(Avela, Kyröläinen, & Komi, 1999; Cornwell,他)。テニスは筋力、スピード、パワーを必要とするスポーツです(Kovacs, 2006a)。それゆえ、これらの研究結果とテニスのパフォーマンスは強く関係します。また、静的ストレッチを実施した後に、下肢筋パワーの指標とされるデプスジャンプを行うと、そのジャンプ高(Cornwell et al., 2001; Young et al., 2003)は有意に低下することがこれまでの研究(Cornwell et al., 2002; Young et al., 2001)から明らかになっています。さらに、静的ストレッチが筋力や筋パワーに及ぼす影響を検討した研究では、静的ストレッチを実施した後に、筋力や筋パワーが30%ほど低下したことを明らかにしています(Avela et al., 1999; Fletcher et al., 2004; 他)。これら研究結果はトレーニングにおける大きな発見です。コーチの役割は選手のパフォーマンスを向上させることにあります。コーチは選手に対して、練習や試合前に静的ストレッチを規則的に行わせているのであれば、選手は本来の70%程度の能力しか発揮することができないことになります。静的ストレッチを実施した後にみられるパフォーマンスの低下は、ストレッチの種類やストレッチをした後の活動様式に左右されるのかもしれません。また、静的ストレッチをした後のパフォーマンスの低下は、ストレッチをした後60分間持続するそうです(Fowles et al., 2000)。この結果は、コーチが認識しておかなければならない重要な情報です。優れたスプリンターの静的ストレッチと20m走における疾走スピードとの関係性を検討した最近の研究から、スプリント前に静的ストレッチを実施した場合、実施していない時よりも疾走スピードにおいて有意な低下がみられたことを報告しています(Nelson et al., 2005)。ウォーミングアップで静的ストレッチを行うことが、その後の筋力、スピード、パワーといった身体的能力を低下させるという事実は多くの研究結果から明らかです(Avela et al., 1999; Cornwell et al., 2001他)。
これらの研究結果の多くは最近のもので、コーチはこのような新たな知見をなかなか理解することができないかもしれません。ウォーミングアップとしての静的ストレッチは、スポーツ指導現場では常識となっているため、この考えを変えるには時間がかかりますが、指導者、トレーナーともに、謙虚にこの事実を受け止めるべきです。
<傷害予防>
指導現場において、未だに練習や試合前のウォーミングアップで静的ストレッチを行っているのは、静的ストレッチがパフォーマンス向上、そして、怪我の危険性を減らす、という2つの誤った認識のためです。後者の思い込みは、おそらく、筋や腱がタイトな状態にある場合、関節の可動域が狭くなっているという意味で柔軟性が欠如しているという判断に基づいているのかもしれません(Garrett, 1993; Hunter & Spriggs,2000)。このような思い込みが、静的ストレッチが怪我の危険性を減らすという考え方をもたらしています(Garrett, 1993)。
しかし、最近の研究結果は、静的ストレッチが怪我の危険性を減らすという見解に異論を唱えるものであり、実際に反論を示しています(Comeau, 2002; Garrett,1993他)。1538名の男子陸軍新兵における下肢傷害の予防に関する研究では、12週間、運動前に静的ストレッチを実施しても傷害の発生率に変化がみられなかったと報告しています(Pope et al., 2000)。ランニング障害の予防に関する2001にも及ぶレビューを調査しても、その多くが運動前のストレッチは下肢障害を予防するという見解を支持するものではありませんでした(Yeung et al., 2001)。
国内でも静的ストレッチが競技パフォーマンスを低下させるという論文での報告があります。
WPMF日本スーパーバンタム級王者、WBC日本ムエタイスーパーバンタム級王者、キックボクシング軽量級最強 日下部竜也選手は、静的ストレッチは一切行わず動的ストレッチを導入しています。
静的ストレッチングがジャンプ能力に及ぼす効果
―生理学面ならびに機能面からの検討―
Effects of Static Stretching on Jumping Ability:from Physiological and Functional Aspects
濵田 桂佑 佐々木 誠
Rigakuryoho Kagaku 23(3): 463-467, 2008. Submitted Jan. 18, 2008. Accepted Feb. 19, 2008.
<要旨>
本研究の目的は,静的ストレッチングがジャンプ能力に及ぼす効果について、生理学面ならびに機能面の2つの側面から検討することである。
〔対象〕
対象は、健常学生20名であった。
〔方法〕
静的ストレッチング前後で、生理学面として伸張反射の潜時、機能面として等運動性筋力(60 deg/secと240 deg/sec),ジャンプ能力として垂直跳び、立ち幅跳びを計測した。〔結果〕各項目を静的ストレッチング前後で比較したところ,ストレッチング後に伸張反射発現までの潜時、60 deg/secの筋力、垂直跳び、立ち幅跳びは有意に低下していた。〔結語〕静的ストレッチングを行った後にジャンプ能力が低下した。その原因として、筋紡錘の感受性低下ならびにゴルジ腱器官の関与による,筋緊張の調節にかかわる中枢神経系の筋緊張抑制メカニズムに基づく筋緊張低下に伴う筋力低下に加えて,伸張反射発現までの時間の延長によって筋収縮にタイミングの遅れが生じたことが示唆された。
静的ストレッチを行うと確実にジャンプ力が低下し競技パフォーマンスが低下することは生理学的にも明確である。という実験論文です。
<静的ストレッチの実用化>
結論は、練習や試合前のウォーミングアップで静的ストレッチを薦めたり、実施させたりすることは選手に害を与える。練習や試合前に静的ストレッチをすることで、パフォーマンスが向上したり、怪我の危険性が減少したりすることはありません。
国内でも運動後の静的ストレッチは筋疲労回復にも有効ではないという報告があります。
ストレッチングの筋疲労回復に関する研究
The study on effect of stretching to recovery of muscle fatigue
• 坂上 昇 Sakanoue Noboru 高知リハビリテーション学院理学療法学科 Department of Physical Therapy,Kochi Rehabilitation Institute
o 大倉 三洋 Okura Mitsuhiro 高知リハビリテーション学院理学療法学科 Department of Physical Therapy,Kochi Rehabilitation Institute
ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し、障害予防、パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている。しかし,その実施状況は決して高率ではなく、その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる。
そこで本研究は、健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に、ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した。
自転車エルゴメーターによる30秒間全力駆動を主運動として、その後10分間の休息を取らせることを2セット行った。その休息時に安静臥位、軽運動、ストレッチングを実施した.検討指標として筋柔軟性、血中乳酸値,作業能力、アンケートを取り上げた。筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり、ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく、ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した。
血中乳酸値の回復については,ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった。作業能力の回復については軽運動が比較的良く、ストレッチングが低い傾向を示した。このように、激しい運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく、効果的でない傾向を示した。
今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では、一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった。しかし、今回の結果は、ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない。
●期待されるセルエクササイズ
私の経験では、多くのスポーツ指導者、トップアスリート、小学生、老人、一般女性にスポーツ指導(空手、バレエ、陸上競技、プロボクシング、キックボクシング、レーシングライダー、プロゴルファー、サッカー、プロ野球・・・)を行い 運動前後の静的ストレッチ禁止を指導して良好な成績を得ています。準備運動としての静的ストレッチを禁止してから 障害が大幅に減少し、競技パフォーマンスが向上しバランスも良くなり柔軟性がかえって増加した報告が相次いでいます。世界的趨勢を見ても 国内においてもリスクが報告される静的ストレッチを根拠なく行うスポーツ現場では見直しを求められます。
トップアスリートのトレーナーとしまして今後も正しいエクササイズ、セルエクササイズ(正しいストレッチを含む身体機能向上運動)の普及に努めたいと思います。
現在、順天大大学大学院医学研究科において私と小林弘幸教授と共同で、エビデンスが確立されたセルエクササイズの研究が進行しています。
筋肉の適度の弛緩と伸展。自律神経機能向上、脳、神経、筋肉の連動運動のスームズ化。
短時間のセルエクササイズでコンディショニング、スポーツ後のケアが完璧に行うことができます。
近い将来、静的ストレッチに代わる 新しい準備運動(セルエクササイズ)として普及することは確実と考えています。
トップアスリートからジュニア、高齢者まで行い驚異的な効果が得られています セルエクササイズ近日、DVD付き書として発売予定です。
どうでしょうか?皆さんも明日から静的ストレッチ・・・勇気を出して止めてみてください。
静的ストレッチを行っていた時に比べ きっと身体がスムーズに動くことに気が付かれることでしょう。
2012年3月25日 日曜日
セル・トレーニングは、これまでのアスリートのトレーニングを大きく変える!!
セル・トレーニングによるコンディショニング、特にストレッチに関してお伝えします。何も考えずにストレッチをしていると、体に思わぬ障害がでることがあります。「正しいストレッチ」が必要なのです。
●セル・トレーニング
現在、私は全国のあらゆる競技のトッププロアスリートのトレーナーとして直接指導を行っています。
最近ではアスリートだけでなくスポーツ指導者、トレーナーへの正しいトレーニングや新しいエクササイズの指導を行っています。
以前にもセル・トレーニングについて概略を説明しました。
セル・トレーニングの本当の意味は組織や器官である 単に筋肉や心肺機能を向上させるだけではなく細胞の機能そのものを向上させる画期的なトレーニング理論です。
アスリートが競技パフォーマンスを向上させるためには多くのことが含まれます。
食事、サプリメント摂取、休養、睡眠、コンディショニング、ケア、治療までもが広義のトレーニングなのです。
順天堂大学大学院医学研究科で自律神経の研究では日本における第一人者 小林弘幸教授と一緒にセル・トレーニングの研究・開発に取り組み プロボクシング、キックボクシング、空手、総合格闘技を始め国内のあらゆるスポーツ分野のトップアスリートへセルトレーニングを導入して指導者も含めて指導してきました。
アスリートのみならず現在では指導者にもその考えが浸透しつつあります。
学校教育の場や陸上、空手、バレエなどジュニアの指導においてもセルトレーニングの目覚ましい効果は確認されています。
これまでコンディショニング、トレーニング、ケア、治療は別々に考えられてきましたが、すべてを統合して指導できる指導者が真の指導者と言えます。
今回はそのセルトレーニングの中でもコンディショニングに焦点を当てて解説したいと思います。
●強度のストレッチには要注意!
コンディショニグとしてスポーツの現場で行われているストレッチ・・・
広く行われているストレッチの危険性に関しては驚くことにほとんど知られていません。
ストレッチはあたりまえ
ストレッチは行えば行うほど、柔軟性が増加し、関節可動域が向上する?
本当でしょうか?
アキレス腱伸ばしを痛みにこらえて行えば行うほど下腿の筋肉はほぐれアキレス腱自体も柔軟性が増す?
とんでもない誤解であり 直ちに止めるべき行為です。
アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎は繰り返された過剰な張力によって起こる慢性の炎症で、アキレス腱本体の微小断裂が原因とされています。
つまり、ちぎれてほころびそうなアキレス腱をもっとちぎれろ!と無理やり引き延ばしているようなものです。
これでは増々、痛みも増強し、炎症は完治しません。
さらに、強度のストレッチで下腿の屈筋群の過剰な伸展により筋膜がぱんぱんに張った状態でいきなり走ったり強い負荷を下腿に加えると肉離れを起こしてしまいます。
私が指導を行う元ジュニアオリンピック日本代表 五十嵐憲文氏が主宰するジュニアの陸上クラブチームでは従来のストレッチを一切とりやめました。するとこの4年間で練習中に肉離れなどの怪我をする子供が皆無になり、身体のバランスが良くなり所属している子供たち全員が自己記録を更新されました。
バレエ、空手、レーシングドライバー、プロゴルファー・・・多くのアスリートが従来のストレッチをやめてから確実に身体の動きが良くなった現実。
まさしく従来のストレッチが怪我の原因でありコンディショニングどころか身体能力を下方修正していたのです。
教育現場で当たりまえのように行われるアキレス腱のばし・・・
これほど無意味で危険な行為はありません。
少なくともこのコラムを読んでいるアスリートの方は、今後、絶対に行わないでください。
●変わりつつある常識
コンディショニングは、練習や競技を行う前に身体の状態が最もベストに持っていく調整です。
従来の危険なストレッチが確実に身体を蝕んでいる場合があります。
最近、とんでもない痛みを関節や腱、筋肉に与えて行うストレッチの書が氾濫しテレビでも特集されて称賛されますが、医師として絶対に反対の立場をとっています。
このような身体を破壊するストレッチが横行すれば、アスリートのみならず多くの子供たちの身体が蝕まれてしまいます。
たとえば私の知るキックボクサーにもなかなか大成できない選手がいます。それはこのストレッチが原因なのかもしれません。
実験的に私が指導を担当させていただいている空手世界王者、キックボクシング王者、元王者達(小川翔選手、野杁正明選手、日下部竜也選手、大石駿介選手、ダニロ・ザノリニ選手)に従来のストレッチを行った場合と私が開発した緩めるストレッチを行った場合では、全く身体の動きに差が出ました。
勿論、従来のストレッチは身体の動きが悪くなりパフォーマンスが極端に低下し、セル・エクササイズ(新しいストレッチ法)では身体がスムーズに動くようになりパフォーマンスが全員、明らかに向上しました。
コンディショニングは筋肉を強引に伸ばしたり緩めたりするのではなく筋肉を緩やかに収縮させたり緊張させることが最も効率よく本来の筋肉のパワーを生み出し 脳、神経、筋肉の回路をスムーズにつなぐことができるようになるのです。
このため呼吸法も重要です。
つまり、自律神経機能を向上させることがコンディショニングの重要な目標なのです。

ストレッチをあなたは何も考えずにやっていませんか?
ストレッチをした後、とても身体が重く感じませんか?
試に、片脚だけ 30秒ほどアキレス腱伸ばしを強めに行ってから、歩いてみてください。
アキレス腱伸ばしをした脚はとても重く感じられ、歩行が困難なっているはずです。
こんな状態で走ったりキックしたりしたらどうなるのでしょうか?
医学界でも何十年も傷には消毒!ガーゼ!が常識でしたが、以前このコラムで解説しましたように 今では傷には消毒は禁忌、ガーゼを貼る行為はNGです。
従来のストレッチの危険性も必ず近年、見直され学校教育の現場から消えてなくなると予想します。
なくすようにしなければならないのが私の使命でもあります。
それでは実際、コンディショニングをどうすればよいのか?特に新しいストレッチ法(セルエクササイズ)に関して解説してみましょう。
●セル・エクササイズ
・頭と顔のタッピングからスタート(副交感神経機能を高めてからエクササイズ)
・いきなり交感神経を高めるエクササイズはタブー
・リラックスした状態からスタートすることで細胞へより多くの血流を供給する。心臓をはじめ各臓器や筋肉、靭帯などの組織に負担が少ない
・副交感神経機能をアップさせると身体の力みがとれてスムーズに身体全体が連動して動くようになる。

1) 頭全体と眉間、目の周りをタッピング (20秒)
2) まず、両手を交差させお互いの手のひらを合わせる。
その状態で 身体を大きく伸展させながら前後、左右(後ろに身体をそらす時は息を吸って、前屈するときは息を吐く、右、左に身体を曲げる時は息を吐いて立位に戻るときは息を吸う)交差させ、手のひらを合わせた状態で身体を回旋させる。時計回り、反時計回り(ゆっくりと呼吸)
ポイント:肩甲骨の動きをスムーズにし身体全体を連動させてストレッチ、腸腰筋を緩め大腿の拳上をスムースにする。全身を均等に十分にストレッチ、呼吸と連動させることで副交感神経機能を向上させる。最も身体が伸展させることができる負担がかからない有効なストレッチ 手の先から足のつま先まで均等に十分ストレッチ可能で身体が一体化しているイメージが湧く。

3) 交差させロックした手首を身体の前面で大きな円を描きます。(時計回り、反時計回り)。
ゆっくりと呼吸しながら行う。交差した両手で遠くにあるものをつかもうとするような感じで行う。
ポイント:肩関節周囲、肩甲骨の可動域を広げ上半身とインナーユニットのスムーズな動き、連動

4) 肩幅よりやや広く足を開いて立位になり両手を臍の下を押さえてゆっくり腹式呼吸
5秒吸って5秒吐き 吐ききった状態で息を5秒止めインナーユニットを保持する。
ポイント:ドローインテクニックで自律神経機能向上と横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群を強化し内臓の強化
5) 片脚立ちになりもう一方の膝を曲げ踵をお尻の方へ近づけ 足首の少し上を同じ側の手で持ってゆっくりと左右に揺らす(脚を変えて両方行う)。この時、胸を張って身体全体をやや伸展させる。
ポイント:足関節、膝関節、股関節を緩め下半身のリラクゼーションとダイナミックストレッチ
片脚立ちでバランス感覚を向上させる。

6)身体を軽く左右に振って身体の全面で両手を高く上下へ挙げ下げを行う。
この場合、腕には一切力を入れず脱力して身体の動きの慣性で両腕を手の指先に意識を入れ投げ上げるように揺する。
ポイント:体幹の姿勢を保持するインナーを鍛えると同時に中枢である体幹の動力を末端へ伝える。パフォーマンスの際、体幹からスムーズに動きを作れるように脳と神経と身体にインプットできる。

7) 身体を軽く左右に揺すって手を交互に前後へ。
この場合、腕には一切力を入れず脱力して身体の動きの慣性で両腕を手の指先に意識を入れ投げ上げるように揺する。手の指先にまで意識を通す。
8) 身体を回旋させ両腕をブラブラさせて、メリーゴーランドのように動かす。
これで完全に体幹と上半身がほぐれます。

セル・エクササイズを導入した野杁正明。Krush YOUTH GP 2011 王者、K-1甲子園2009 王者
●セル・エクササイズの効用
セル・エクササイズは腰や肩、膝などの各部位への負担を大幅に減少させますから子供から老人まで、ほとんどスポーツを行わない女性でも簡単に安心して負担なく取り組むことができます。
ポイントは
ストレッチは部分ストレッチではなく全体を連動したストレッチ
必ず身体全体を連動させる。
末端から中枢まで
中枢である体幹の動きが末端を連動させる
上半身・インナーユニット(腹部の横隔膜から骨盤底筋群)・下半身を連動させる。
ポイントは 肩甲骨、インナーユニット、股関節、足関節
・肩甲骨と股関節 の可動域を広げ 柔らかいスムーズな動き
・末端を固定した動き(同時にダイナミックストレッチができる)
・呼吸法との連動
・身体の上部と下部を繋ぐ 体幹である 腹部(インナーユニット)の運動を注目(横隔膜、腹横筋、骨盤底筋群、多裂筋で囲まれた臓器が入っている部分)
肩甲骨の周囲がほぐれ 股関節がほぐれ動きがスムーズになることでエクササイズ能力が向上・・・
セル・エクササイズは回旋運動を主体として比較的ゆっくりと筋肉と呼吸を意識して行います。
特に回旋系の動きを主体として末端から中枢まで。
いつも連動した動きとリズムで行います。
・回旋系が主体
・呼吸法と連動
・ドローインなどインナーマッスル強化
・ストレッチは末端を固定して全て中枢と連動した動き
・常に呼吸と筋肉や関節の動きを意識する
●広めたいセル・エクササイズ
セル・エクササイズは細胞を賦活させ身体全体の機能を向上させるエクササイズです。
コンディショニグを行うには最も適したテクニックだと考えています。
コンディショニングは肉体だけではなく 自律神経機能を同時に整えるべきです。
これまでコンディショニグはフィジカルに注目されストレングストレーナーが主としてストレッチを主体としてその指導を行ってきました。
最も人間の身体をよく知って解剖学、運動生理学の理論と実践が高いレベルで可能な医師がトレーナーとして現場に立つことは大きな意義を持ちます。
生体は細胞から構成され細胞の機能は、生体の根源です。組織も器官も細胞から構成されています。セルエクササイズは確実に生体の機能を向上させ アスリートのパフォーマンス向上のみならず 一般の方の健康にも役立ちます。
このセルエクササイズを、レーシングドライバー、プロ野球選手、プロゴルファー、陸上選手を始めプロボクシング、キックボクシング、空手、総合格闘技などの多くの格闘家へ指導を行い目覚ましい成果が得られています。
大石ジム(名古屋)ではこのセル・エクササイズを全国の格闘技ジムとしては最も早く取り入れ選手の肉体のみならず科学的精神のコンディショニングに努めています。セル・エクササイズは確実に格闘家の競技パフォーマンスを向上させます。このセルエクササイズをいち早く導入した大石ジムでは格闘界において多くの王者を輩出することになるでしょう。
第41回でも紹介させていただきましたがK1甲子園を高校1年生で制した 野杁正明選手(大石ジム)もセルエクササイズ指導を受け Krush YOUTH GP 2011優勝。若手格闘家で最も注目を集める最強王者の一人です。
柔よく剛を制する。
力任せのストレッチから技のストレッチへ。格闘技界の指導法も大きな変革の時です。
2012年3月12日 月曜日
ストレッチは危険?そのエビデンスを探る!!
医学博士 末武信宏

幼少期から運動前にはストレッチをしなさいと必ず言われてきました。本当にストレッチは効果があるのかを検証した論文があります。
Effects of stretching before and after exercising on muscle soreness and risk of injury: systematic review.
BMJ. 2002;325:468.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
この論文はこれまでの8つの論文をまとめたレビューです。対象人数が最大のものは17~35歳の兵役でのトレーニング生1,538人、同じく1,093人のものが含まれています。
調査では毎日のトレーニング前後に5~10分の準備運動(ストレッチング)をする群としない群に分け、80日間のトレーニング期間の筋肉痛、ケガの状態が評価されました。
筋肉痛は0から10までの11段階で評価されました。ケガは捻挫、疲労骨折、骨膜炎、アキレス腱炎、前脛骨区画症候群(前脛骨筋、長指伸筋、長母指伸筋とそれぞれの筋膜および前脛骨区画に関与する神経と血管に、何らかの原因によって障害が生じ、そのために組織内圧が亢進し、前脛骨区画内の循環系に不全が起こり、筋・腱・神経組織に機能障害や壊死が生じるものである)を対象とされました。
結果は、筋肉痛のスコアは両群で同じでした。上の図は80日間のトレーニング期間にケガをしなかった者の割合で、赤は1998年の調査でのストレッチング施行群、青は非施行群、水色は2000年の調査でのストレッチング施行群、オレンジは非施行群です。1998年、2000年の調査とも両群でケガが起きる割合は同じでした。
他の6つの調査でもほぼ同様の結果がでています。
運動前に準備運動(ストレッチング)をしても筋肉痛やケガを防ぐことはできません。筋肉痛になるときはなる、ならないときはならない、ケガをするときはする、しないときはしないのです。
それでは実際のアスリートへのストレッチはどうでしょうか?
テニス選手のためのストレッチに関する最新情報
Pre-Tennis Stretching
常識を覆す静的ストレッチの最新情報です。(文責:スポーツ科学情報部会 高橋)
Coaching & Sport Science Review - Issue 43, December 2007
テニス選手のためのストレッチに関する最新情報
Pre-Tennis Stretching
Mark Kovacs and T. J. Chandler ( Jacksonville State University, USA)
<はじめに>
テニスは、大きな力やトルクの発揮をともなう中・高強度の運動が繰り返し必要とされるスポーツです(Kovacs、 Chandler、 & Chandler、 2007)。選手はこれらの大きな負荷にともなって生じる怪我を未然に防ぐために、練習や試合の前に時間をかけてウォーミングアップを実施します。
従来から実施されているウォーミングアップは、主に、テニスで頻繁に使われる筋肉を中心に静的ストレッチするというものです。静的ストレッチは、パフォーマンスを改善したり怪我を予防したりするものとして、何10年にもわたって、指導現場で実施されてきました。1980年代と1990年代中頃の研究論文(Shellock & Prentice、 1985; Smith、 1994)では、静的ストレッチはウォーミングアップとして良い効果をもたらすことが報告され、多くのコーチはスポーツ医・科学者のアドバイスに従って、選手に静的ストレッチを実施させていました。しかし、最近の研究ではウォーミングアップで静的ストレッチを行うと、実際には運動のパフォーマンスが低下することを報告しており、従来のアドバイスを修正していく必要性があることを示しています。
<パフォーマンス>
1960年代の研究論文(DeVries、 1963)では、ウォーミングアップで静的ストレッチを実施しても、その後の100ヤードダッシュの結果に改善がみられなかったことを報告しています。それにもかかわらず、各種スポーツ指導現場では、未だにウォーミングアップで静的ストレッチを行うことが常識になっており、静的ストレッチはパフォーマンスを改善するもの、という考え方が常識となっています。
しかし、実際には静的ストレッチは、筋力、スピード、パワーといったパフォーマンスを低下させるということが多くの研究結果から明らかになっています(Avela, Kyröläinen, & Komi, 1999; Cornwell, Nelson, Heise,& Sidaway, 2001; Cornwell, Nelson, & Sidaway, 2002; DeVries, 1963; Fletcher & Jones、 2004; Fowles, Sal.e, & MacDougal.l, 2000; Kokkonen, Nelson, & Cornwell, 1998; Nelson, Driscoll, Young, & Schexnayder, 2005; Nelson, Guillory, Cornwell, & Kokkonen, 2001a; Nelson & Kokkonen, 2001b; Young & Elliott, 2001; Young & Behm, 2003)。
テニスは筋力、スピード、パワーを必要とするスポーツです(Kovacs, 2006a)。それゆえ、これらの研究結果とテニスのパフォーマンスは強く関係します。また、静的ストレッチを実施した後に、下肢筋パワーの指標とされるデプスジャンプを行うと、そのジャンプ高(Cornwell et al., 2001; Young et al., 2003)は有意に低下することがこれまでの研究(Cornwell et al., 2002; Young et al., 2001)から明らかになっています。さらに、静的ストレッチが筋力や筋パワーに及ぼす影響を検討した研究では、静的ストレッチを実施した後に、筋力や筋パワーが30%ほど低下したことを明らかにしています(Avela et al., 1999; Fletcher et al., 2004; Fowles et al., 2000; Kokkonen et al., 1998; Nelson et al., 2001a)。これら研究結果はテニスコーチに対する大きな発見です。テニスコーチの役割は選手のパフォーマンスを向上させることにあります。コーチは選手に対して、練習や試合前に静的ストレッチを規則的に行わせているのであれば、選手は本来の70%程度の能力しか発揮することができないことになります。静的ストレッチを実施した後にみられるパフォーマンスの低下は、ストレッチの種類やストレッチをした後の活動様式に左右されるのかもしれません。また、静的ストレッチをした後のパフォーマンスの低下は、ストレッチをした後60分間持続するそうです(Fowles et al., 2000)。
この結果は、コーチが認識しておかなければならない重要な情報です。静的ストレッチがパフォーマンスに及ぼす正あるいは負の効果は、関連する運動のスピードに左右されるのかもしれません。
Knudsonら(2004)の研究によると、静的ストレッチをした後に高速での動きがなされる場合にはパフォーマンスの低下は見られないこと、テニス・サーブの場合、そのスピードや正確性のどちらのパフォーマンスにおいても静的ストレッチによる負の影響は見られないことを報告しています。
そのため、静的ストレッチは高速での動きや正確性に関連する運動のパフォーマンスを低下させるものではないという見解もありますが、この理論は必ずしも支持されるものではありませんでした。
それは、優れたスプリンターの静的ストレッチと20m走における疾走スピードとの関係性を検討した最近の研究から明らかとなっています。この研究によると、スプリント前に静的ストレッチを実施した場合、実施していない時よりも疾走スピードにおいて有意な低下がみられたことを報告しています(Nelson et al., 2005)。したがって、下肢、体幹、上肢の筋肉を含む複数の筋群を使うテニス・サーブのような動作において、そのパフォーマンスの減少量を定量化することは難しいといえるかもしれません。しかし、ウォーミングアップで静的ストレッチを行うことが、その後の筋力、スピード、パワーといった身体的能力を低下させるという事実は多くの研究結果から明らかです(Avela et al., 1999; Cornwell et al., 2001; Cornwell et al., 2002; DeVries, 1963; Evetovich, Nauman, Conley、 & Todd、 2003; Fletcher et al., 2004; Fowles et al.,2000; Kokkonen et al., 1998; Nelson et al., 2005; Wilson, Murphy, & Pryor, 1994; Young et al., 2001; Young et al., 2003)。
これらの研究結果の多くは最近のものであり、コーチはこのような新たな知見をなかなか理解することができないかもしれません。ウォーミングアップとしての静的ストレッチは、スポーツ指導現場では常識となっているため、この考えを変えるには時間がかかるでしょう。しかし、指導者、トレーナーともに、謙虚にこの事実を受け止めるべきです。
<傷害予防>
指導現場において、未だに練習や試合前のウォーミングアップで静的ストレッチを行っているのは、静的ストレッチがパフォーマンスを改善するもの、そして、怪我の危険性を減らすもの、という2つの誤った認識のためです。後者の思い込みは、おそらく、筋や腱がタイトな状態にある場合、関節の可動域が狭くなっているという意味で柔軟性が欠如しているという判断に基づいているのかもしれません(Garrett, 1993; Hunter & Spriggs,2000)。このような思い込みが、静的ストレッチが怪我の危険性を減らすという考え方をもたらしているのです(Garrett, 1993)。
しかし、最近の研究結果は、静的ストレッチが怪我の危険性を減らすという見解に異論を唱えるものであり、実際に反論を示しています(Comeau, 2002; Garrett,1993; Herbert & Gabriel, 2002; Hunter et al., 2000; Kovacs, 2006b; Levine, Lombardo, McNeeley & Anderson 1987; Pope, Herbert& Kirwan、 1998; Pope, Herbert, Kirwan& Graham, 2000; Shrier 1999, 2001, 2004; Shrier & Gossal., 2000; Yeung & Yeung 2001)。
1538名の男子陸軍新兵における下肢傷害の予防に関する研究では、12週間、運動前に静的ストレッチを実施しても傷害の発生率に変化がみられなかったことを報告しています(Pope et al., 2000)。ランニング障害の予防に関する2001にも及ぶレビューを調査しても、その多くが運動前のストレッチは下肢障害を予防するという見解を支持するものではありませんでした(Yeung et al., 2001)。静的ストレッチと怪我の発生率の減少との関係性について、関係があることを示した研究はほんのわずかで(Bixler & Jones, 1992; Cross & Worrell,1999; Ekstrand & Gillquist,1983)、大部分の研究や総説では関係がないことを報告しています(Andersen, 2005; Garrett,1993; Herbert et al., 2002; Hunter et al., 2000; Levine et al.,1987; Shrier, 1999, 2001, 2004; Shrier et al., 2000; Yeung et al., 2001)
<静的ストレッチの実用化>
結論は、練習や試合前のウォーミングアップで静的ストレッチを薦めたり、実施させたりすることは選手に害を与える。練習や試合前に静的ストレッチをすることで、パフォーマンスが向上したり、怪我の危険性が減少したりすることはありません。
国内でも運動後の静的ストレッチは筋疲労回復にも有効ではないという報告がある。
ストレッチングの筋疲労回復に関する研究
The study on effect of stretching to recovery of muscle fatigue
• 坂上 昇 Sakanoue Noboru 高知リハビリテーション学院理学療法学科 Department of Physical Therapy,Kochi Rehabilitation Institute
• 大倉 三洋 Okura Mitsuhiro 高知リハビリテーション学院理学療法学科 Department of Physical Therapy,Kochi Rehabilitation Institute
• ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し,障害予防,パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている.しかし,その実施状況は決して高率ではなく、その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる。そこで本研究は,健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に、ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した。自転車エルゴメーターによる30秒間全力駆動を主運動として、その後10分間の休息を取らせることを2セット行った。その休息時に安静臥位、軽運動、ストレッチングを実施した。検討指標として筋柔軟性,血中乳酸値、作業能力、アンケートを取り上げた。筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり,ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく、ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した。血中乳酸値の回復については、ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった。作業能力の回復については軽運動が比較的良く、ストレッチングが低い傾向を示した.このように,激運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく、効果的でない傾向を示した.今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では、一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった。しかし、今回の結果は、ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない。
私の経験からも多くのスポーツ指導者、トップアスリート、小学生、老人、一般女性にスポーツ指導(空手、バレエ、陸上競技、プロボクシング、キックボクシング、レーシングライダー、プロゴルファー、サッカー、プロ野球・・・)を行い 運動前後の静的ストレッチ禁止を指導して良好な成績を得ている。準備運動としての静的ストレッチを禁止してから 障害が大幅に減少し、競技パフォーマンスが向上しバランスも良くなり柔軟性がかえって増加した報告が相次いだ。
世界的趨勢を見ても 国内においてもリスクが報告される静的ストレッチを根拠なく行うスポーツ現場では見直しを求められる。
トップアスリートの指導者、トレーナーとして今後も正しいエクササイズ、セルエクササイズ(正しいストレッチを含む身体機能向上運動)の普及に努めたい。
現在、順天大大学大学院医学研究科において小林弘幸教授の下、エビデンスが確立された
セルエクササイズの研究が進行している。
2012年2月24日 金曜日
ダイエット・減量の科学
ウエイト制の競技にとって科学的ダイエットはトレーニング以上に重要な知識であり、実践です。今回は、これまで私が多くのトッププロボクサーやキックボクサー、総合格闘家へ指導を行ってきた理論とダイエットにおける科学を解説させていただきます。今回は減量という言葉を全てダイエットとしてお話しします。
●真のダイエットを理解する
体重を減少させることがダイエットではなく 不必要な脂肪、筋肉を減少させることが真のダイエットです。
一般女性にとっても同様です。
脂肪だけ減少させるのではなく日々のトレーニングにおいて無駄な筋肉を増加させないことが大切です。
無駄な筋肉はまるで鉛のウエイトを付けて闘うことになってしまいます。
体脂肪は悪者扱いされますが、体脂肪にも以下のような重要な働きがあります。
◆体脂肪の役割
1、エネルギーの貯蔵
体が正常な働きを維持するためにはエネルギーが必要で、このエネルーギーは身体の中にある脂肪・糖質・タンパク質といった栄養素の中に貯蔵されています。
そのエネルギーは13万9000キロカロリー~18万6000キロカロリー位になり、生きるための最低限必要なエネルギーは1,200キロカロリーなので、140日分ぐらいのエネルギーが貯蔵されています。
2、タンパク質の節約
生命維持の源になる物質がタンパク質です。
タンパク質を日々の身体活動に使うと生命維持に必要な成分が減少し、病気の原因となります。(飢餓状態などの切羽詰った時のみに使用されます。)
体脂肪はタンパク質の消費を節約し、消耗させないようにしています。
3、体温調節
皮下組織にある体脂肪が放熱をコントロールして、体温が調節されています。
4、生理の発現・維持
エストロゲンという女性ホルモンが正常に分泌する際、体脂肪が重要な働きをしています。
初潮が現れるためには体脂肪率が17%以上、生理周期が正常に維持されるためには22%以上であることが必要だと考えられており、女性にとって健康と正常な生理の発現と維持のためには体重の約17%~25%ぐらいの体脂肪は必要なのです。
何でもいいから「やせればいい!」は危険です。
ダイエットに重要なことは食事制限だけではありません。
食事のとり方、食事のとる時間、食事内容にも大きく関係があります。
ダイエットは、
1:エネルギー摂取を減らす
2:エネルギー消費を増やす
3:筋肉の量を増やす
ことです。
1:の場合、食事を減らすことで筋肉量や骨量まで減少させることもあります。
2:の場合、有酸素運動では、1時間のジョギングでもたった250Kcalしかエネルギー消費しません。
3:の場合、いたずらに筋肉量を増加させるとパワーは増しても持久力やスピードが落ちることがあります。
アスリートにとって1~3を効率よく組み合わせてダイエットする必要があります。
●医学的ダイエット
トレーニングも、効率的なトレーニングで無駄な筋肉の増加を抑制します。
ここでは医学的に行われていることも含めて解説してみます。
一般の女性へのダイエット指導は食事の内容、取り方、量を指導しますが、食欲も抑制できない、運動もできない方へは、薬剤の効果を期待してメディカルダイエットを行うこともあります。
医療機関でよく使用されるのが、
1:サノレックス(食欲抑制剤)
2:ゼニカル(脂肪排出剤)
3:漢方(特に防風通聖散が使用されます。)
4:αリポ酸注射
1, 2はカロリー摂取を制限するためで 3,4は基礎代謝を向上させカロリー消費を増加させるための薬剤です。
ダイエットを希望される方の身体の状態を検査してそれぞれの薬剤の投与を行うこともあります。
しかし、アスリートには1,2はお勧めできません、。
便秘で悩まれたりどうしても代謝が低下傾向にある場合は3,4を短期間試してみることも良いでしょう。
防風通聖散は特に熱を発生させ基礎代謝を向上させる働きがある褐色脂肪細胞を刺激して熱産生を行う作用が指摘されています。

写真左:暗視野での血液観察(Live blood analysis)
写真右:キーレーションにも使用されるαリポ酸注射。ダイエットでアスリートが使用するケースも。ドーピングリストには掲載されていない薬剤
ダイエットは体重を単純に減少させるのではなく、体脂肪を減少させることに主たる目的があります。
体脂肪には、大きく分けて内臓脂肪と皮下脂肪があります。
内臓脂肪は男性で溜まりやすくいわゆる メタボリックシンドロームの原因と関連性指摘されています。
アスリートで内臓脂肪が多い方はまずいませんが 要注意な脂肪です。
皮下脂肪は極端に減らしすぎることは身体によくないことが指摘されています。脂肪はエネルギー源でもあるので競技によっては必要な場合があるためです。
生理学的にはエネルギーは筋肉中のATPが外れることで生じます。このATPが無くなるとグリコーゲンが解糖されてエネルギーを補給します。
さらにそれも無くなり筋肉内のエネルギーがゼロになると初めて脂肪からエネルギーが使われます。
つまり脂肪は身体の中で最後に使用されるエネルギーであり、それを効率よく使用できる人はエネルギー代謝がよく、長時間にわたって競技を継続できます。
●急激なダイエットのリスク

極限まで体を絞って戦うプロボクサー
プロボクシングやキックボクシング、レスリング、柔道、総合格闘技などはヘビー級以外はほとんどウエイト制で闘います。
相撲の場合は格闘技でも例外でウエイト制ではありません。
つまり体重が重ければ有利に働きます。
力士の場合、体重を増やすためにインスリン注射をしている人もいます。
インスリンを注射すると脂肪がたまるので無理して急速に体重を増加させるわけです。
CTスキャンでの検査結果では、現役の力士は太っている割には内臓脂肪が少なく、ほとんどが皮下脂肪です。
現役の力士は意外に病気が少ないのですが、引退後は内臓脂肪が増加しメタボリックシンドロームの人が増えてきます。
急激な運動で脂肪を分解させるとケトン体という有害物質が出現してくるので健康に害を及ぼす可能性がありますので要注意です。
試合が決まり短期間で急激なダイエットを行えばこのようなリスクがあることを知るべきです。
格闘家は普段からの節制が何よりも大切ですね。
●最新ダイエット事情

血液分析で効率的なダイエット法を探る

採取した血液をスライドガラスに付けて顕微鏡で観察

小指から血液を採血
最近の研究では面白いことがわかってきました。
脂肪細胞にはいろいろなホルモンや酵素など、生理活性物質を産生、分泌しているということです。
つまり脂肪細胞は悪いことばかりではなく身体の機能を整えるという働きもあるので、むやみやたらと減少させることは医学的には問題なのです。
さらに、最近DNAに結合しているBMAL1(ビーマル1)というたんぱく質が脂肪をため込むための酵素を増やす働きがあることがわかりました。
しかも、BMAL1は、体内リズムとも密接な関係をもち、時間帯によって増減するということもわかってきました。
その量が多ければ多いほど、脂肪がたまりやすいことが解明されました。
BMAL1の量が最大となる深夜に食事をすると、脂肪を誘導しやすい状態になり太る可能性が高まります。
深夜には食事はとらない、規則正しい食生活がダイエットの基本なのです。
逆に朝食をとらないと飢餓の危険を感じ、心身の活動を抑えてエネルギーを脂肪に換え、蓄えることになります。
最近話題の主時計遺伝子と朝食の関係です。
また、朝の練習と夕方の練習とではどちらが練習後に成長ホルモンが出やすいか?
答えは、夕方です。
だから、トレーニングをするには夕方練習の方が有益でありダイエットにも効果的なのです。
また、自律神経機能の向上もダイエットには有益です。
ストレスが高まると交感神経機能が向上します。
すると副交感神経機能が抑制され 代償的に 食欲が増加し食べることで平衡を保とうとします。
ストレス食いがこの典型的パターンです。
練習後はリラックスする。絶対、重要です。リラックスすることで副交感神経機能は向上し無理な食欲は抑えられます。
睡眠を十分とることも副交感神経機能を向上させ無用な食欲向上を抑えます。
さらに消化管の動きを良くする・・・つまり腸内細菌のバランスを整えるために便秘を改善することは重要です(もちろん下痢になりやすいような食生活を送ってはいけませんが)。
私どもは試合前にビオスリーといった善玉腸内細菌の内服薬をアスリートに投与することがありますが、ヨーグルトやヤクルトなど乳酸菌製剤を摂取することも腸内細菌叢を正常化し腸内環境を改善することはとても大切なことで効率よいダイエットに繋がります。
また、ドローインといった お腹を凹ませるエクササイズでゆっくり呼吸し腹横筋を鍛えることでカロリーも消費し、インナーマッスルの強化、姿勢保持、エネルギー消費量の増加によりダイエット効果が期待できます。
胸を張って背筋を伸ばし、おへそを中心にきゅっと力を入れて、お腹全体を凹ませます。
ポイントはお腹と背中をくっつけるように意識して凹ませたら、そのまま30秒キープ。
これはヨガのテクニックで、ヒクソングレーシーが取り入れているトレーニングです。
●正しいダイエットの普及を!
ダイエットの手法をまとめてみましょう。
1:急激な食事制限は避けて日々節制する。
2:深夜の食事は避ける
3:朝食を必ずとる 規則正しい食生活
4:十分な睡眠
5:腸内細菌叢の正常化
6:リラックスする
7:朝のトレーニングより夕方のトレーニングを重点的に
8:糖質をとってトレーニングする(筋肉を減少させないため)
9呼吸法(ドローイン)
プロボクサーの方は過酷なダイエットで大きな身体的リスクにさらされます。
私の指導したプロボクサーの中にどうしても落ちない体重をこっそり計量前日、サウナで脱水させ減量を図った選手がいました。
短時間でダイエットを行うことは水分を身体から汗として無理やり排出させるしかありません。
脱水行為は身体に大きな負担をかけます。とても危険な行為です。
さらに、脱水は脳へのダメージを大きくします。
脱水によって循環血液量が減少し脳へ行く血液量が減少すると集中力が低下し 打撃によるダメージの蓄積が増加します。
首の緊張も低下し打撃により大きく脳が揺れることになり プロボクサーとしての選手生命を左右される危険な状態です。
医学が進んだ今、無理なダイエットは選手生命を短くするだけでなく身体能力を大きく損なうことになります。
私は格闘技関係者として、プロのトレーナーとして正しいダイエットの普及に努めています。
今回のコラムがダイエットに苦しむ選手のお役にたてれば幸いです。




























