最新スポーツ情報

2012年4月22日 日曜日

静的ストレッチの危険性


長年にわたって私は静的ストレッチのリスクや無効性を訴えてきました。しかし、実際のスポーツ現場では未だに多くの指導者が当たり前のように長時間にわたる準備運動としての静的ストレッチを子供やアスリートに強要し、誰もが疑問を抱かずに黙々とストレッチに励んでいます。静的ストレッチの有害性を指摘する学説があることも知ってもらいたいと思います。

●静的ストレッチの効果に疑問
準備運動として静的ストレッチを行えば柔軟性が増加し怪我の予防につながり競技パフォーマンスが向上する。
スポーツ後のケアとして静的ストレッチを十分行うと疲労回復が促進され筋肉痛の予防につながります。
従来から考えられてきたこれらの静的ストレッチ信仰は全く根拠がなく 逆にアスリートや子供たちの身体を蝕む・・・決して行ってはいけない行為なのです。
股割りを長時間行うことが当たり前。
子供たちが泣こうが、わめこうが、蹴りを上達させるために股割りを行うのは必要なこと――。

是非、今回の私の解説を読んでいただき この考えを改めていただきたいと考えます。
ちなみに一切、股割りを行わない 前屈が-20センチの 80歳代の身体の固さの私(柔軟性が全くありません。)でも今でも空手の有段者やプロのキックボクサー同様のはいキックや上段蹴りを無理なく行えます。
柔軟性が高いから蹴りの破壊力が増す・・・ことは今や過去の古い根拠がない理論です。
学校の教師をはじめ多くのトレーナーやアスリートたちは科学論文や医学論文を読む機会がほとんどありません。多くのアスリートたちは近代科学から取り残された環境で日夜 トレーニングに励んでいるようです。


本当に静的ストレッチは効果があるのかを検証した論文があります(Effects of stretching before and after exercising on muscle soreness and risk of injury: systematic review. BMJ. 2002)。

この論文はこれまでの8つの論文をまとめたレビューです。対象人数が最大のものは17~35歳の兵役でのトレーニング生1,538人、同じく1,093人のものが含まれています。
調査では毎日のトレーニング前後に5~10分の準備運動(ストレッチング)をする群としない群に分け、80日間のトレーニング期間の筋肉痛、ケガの状態が評価されました。

筋肉痛は0から10までの11段階で評価されました。ケガは捻挫、疲労骨折、骨膜炎、アキレス腱炎、前脛骨区画症候群(前脛骨筋、長指伸筋、長母指伸筋とそれぞれの筋膜および前脛骨区画に関与する神経と血管に、何らかの原因によって障害が生じ、そのために組織内圧が亢進し、前脛骨区画内の循環系に不全が起こり、筋・腱・神経組織に機能障害や壊死が生じるものである)を対象とされました。

結果は、筋肉痛のスコアは両群で同じでした。上の図は80日間のトレーニング期間にケガをしなかった者の割合で、赤は1998年の調査でのストレッチング施行群、青は非施行群、水色は2000年の調査でのストレッチング施行群、オレンジは非施行群です。1998年、2000年の調査とも両群でケガが起きる割合は同じでした。
他の6つの調査でもほぼ同様の結果がでています。
運動前に準備運動(ストレッチング)をしても筋肉痛やケガを防ぐことはできません。筋肉痛になるときはなる、ならないときはならない、ケガをするときはする、しないときはしないのです。
それでは実際のアスリートへのストレッチはどうでしょうか?




スポーツ・トレーニング外来

●最新情報では?
Pre-Tennis Stretching
常識を覆す静的ストレッチの最新情報です。(文責:スポーツ科学情報部会 高橋)


Coaching & Sport Science Review - Issue 43, December 2007
テニス選手のためのストレッチに関する最新情報
Pre-Tennis Stretching
Mark Kovacs and T. J. Chandler ( Jacksonville State University, USA)


<はじめに>
テニスは、大きな力やトルクの発揮をともなう中・高強度の運動が繰り返し必要とされるスポーツです(Kovacs、 Chandler、 & Chandler、 2007)。選手はこれらの大きな負荷にともなって生じる怪我を未然に防ぐために、練習や試合の前に時間をかけてウォーミングアップを実施します。
従来から実施されているウォーミングアップは、主に、テニスで頻繁に使われる筋肉を中心に静的ストレッチするというものです。静的ストレッチは、パフォーマンスを改善したり怪我を予防したりするものとして、何10年にもわたって、指導現場で実施されてきました。1980年代と1990年代中頃の研究論文(Shellock & Prentice、 1985;  Smith、 1994)では、静的ストレッチはウォーミングアップとして良い効果をもたらすことが報告され、多くのコーチはスポーツ医・科学者のアドバイスに従って、選手に静的ストレッチを実施させていました。しかし、最近の研究ではウォーミングアップで静的ストレッチを行うと、実際には運動のパフォーマンスが低下することを報告しており、従来のアドバイスを修正していく必要性があることを示しています。

<パフォーマンス>
1960年代の研究論文(DeVries、 1963)では、ウォーミングアップで静的ストレッチを実施しても、その後の100ヤードダッシュの結果に改善がみられなかったことを報告しています。それにもかかわらず、各種スポーツ指導現場では、未だにウォーミングアップで静的ストレッチを行うことが常識になっており、静的ストレッチはパフォーマンスを改善するもの、という考え方が常識となっています。

しかし、実際には
静的ストレッチは、筋力、スピード、パワーといったパフォーマンスを低下させるということが多くの研究結果から明らかになっています(Avela, Kyröläinen, & Komi, 1999; Cornwell,他)。テニスは筋力、スピード、パワーを必要とするスポーツです(Kovacs, 2006a)。それゆえ、これらの研究結果とテニスのパフォーマンスは強く関係します。また、静的ストレッチを実施した後に、下肢筋パワーの指標とされるデプスジャンプを行うと、そのジャンプ高(Cornwell et al., 2001; Young et al., 2003)は有意に低下することがこれまでの研究(Cornwell et al., 2002; Young et al., 2001)から明らかになっています。さらに、静的ストレッチが筋力や筋パワーに及ぼす影響を検討した研究では、静的ストレッチを実施した後に、筋力や筋パワーが30%ほど低下したことを明らかにしています(Avela et al., 1999; Fletcher et al., 2004; 他)。これら研究結果はトレーニングにおける大きな発見です。

コーチの役割は選手のパフォーマンスを向上させることにあります。コーチは選手に対して、練習や試合前に静的ストレッチを規則的に行わせているのであれば、選手は本来の70%程度の能力しか発揮することができないことになります。静的ストレッチを実施した後にみられるパフォーマンスの低下は、ストレッチの種類やストレッチをした後の活動様式に左右されるのかもしれません。また、静的ストレッチをした後のパフォーマンスの低下は、ストレッチをした後60分間持続するそうです(Fowles et al., 2000)。この結果は、コーチが認識しておかなければならない重要な情報です。優れたスプリンターの静的ストレッチと20m走における疾走スピードとの関係性を検討した最近の研究から、スプリント前に静的ストレッチを実施した場合、実施していない時よりも疾走スピードにおいて有意な低下がみられたことを報告しています(Nelson et al., 2005)。


ウォーミングアップで静的ストレッチを行うことが、その後の筋力、スピード、パワーといった身体的能力を低下させるという事実は多くの研究結果から明らかです(Avela et al., 1999; Cornwell et al., 2001他)。

これらの研究結果の多くは最近のもので、コーチはこのような新たな知見をなかなか理解することができないかもしれません。ウォーミングアップとしての静的ストレッチは、スポーツ指導現場では常識となっているため、この考えを変えるには時間がかかりますが、指導者、トレーナーともに、謙虚にこの事実を受け止めるべきです。

<傷害予防>
指導現場において、未だに練習や試合前のウォーミングアップで静的ストレッチを行っているのは、静的ストレッチがパフォーマンス向上、そして、怪我の危険性を減らす、という2つの誤った認識のためです。後者の思い込みは、おそらく、筋や腱がタイトな状態にある場合、関節の可動域が狭くなっているという意味で柔軟性が欠如しているという判断に基づいているのかもしれません(Garrett, 1993; Hunter & Spriggs,2000)。このような思い込みが、静的ストレッチが怪我の危険性を減らすという考え方をもたらしています(Garrett, 1993)。

しかし、最近の研究結果は、静的ストレッチが怪我の危険性を減らすという見解に異論を唱えるものであり、実際に反論を示しています(Comeau, 2002; Garrett,1993他)。1538名の男子陸軍新兵における下肢傷害の予防に関する研究では、12週間、運動前に静的ストレッチを実施しても傷害の発生率に変化がみられなかったと報告しています(Pope et al., 2000)。ランニング障害の予防に関する2001にも及ぶレビューを調査しても、その多くが運動前のストレッチは下肢障害を予防するという見解を支持するものではありませんでした(Yeung et al., 2001)。
国内でも静的ストレッチが競技パフォーマンスを低下させるという論文での報告があります。


WPMF日本スーパーバンタム級王者、WBC日本ムエタイスーパーバンタム級王者、キックボクシング軽量級最強 日下部竜也選手は、静的ストレッチは一切行わず動的ストレッチを導入しています。


 

静的ストレッチングがジャンプ能力に及ぼす効果
―生理学面ならびに機能面からの検討―
Effects of Static Stretching on Jumping Ability:from Physiological and Functional Aspects
濵田 桂佑  佐々木 誠
Rigakuryoho Kagaku 23(3): 463-467, 2008. Submitted Jan. 18, 2008. Accepted Feb. 19, 2008.


<要旨>
本研究の目的は,静的ストレッチングがジャンプ能力に及ぼす効果について、生理学面ならびに機能面の2つの側面から検討することである。

〔対象〕
対象は、健常学生20名であった。

〔方法〕
静的ストレッチング前後で、生理学面として伸張反射の潜時、機能面として等運動性筋力(60 deg/secと240 deg/sec),ジャンプ能力として垂直跳び、立ち幅跳びを計測した。〔結果〕各項目を静的ストレッチング前後で比較したところ,ストレッチング後に伸張反射発現までの潜時、60 deg/secの筋力、垂直跳び、立ち幅跳びは有意に低下していた。〔結語〕静的ストレッチングを行った後にジャンプ能力が低下した。その原因として、筋紡錘の感受性低下ならびにゴルジ腱器官の関与による,筋緊張の調節にかかわる中枢神経系の筋緊張抑制メカニズムに基づく筋緊張低下に伴う筋力低下に加えて,伸張反射発現までの時間の延長によって筋収縮にタイミングの遅れが生じたことが示唆された。
静的ストレッチを行うと確実にジャンプ力が低下し競技パフォーマンスが低下することは生理学的にも明確である。という実験論文です。


<静的ストレッチの実用化>
結論は、練習や試合前のウォーミングアップで静的ストレッチを薦めたり、実施させたりすることは選手に害を与える。練習や試合前に静的ストレッチをすることで、パフォーマンスが向上したり、怪我の危険性が減少したりすることはありません。
国内でも運動後の静的ストレッチは筋疲労回復にも有効ではないという報告があります。



ストレッチングの筋疲労回復に関する研究
The study on effect of stretching to recovery of muscle fatigue
• 坂上 昇 Sakanoue Noboru 高知リハビリテーション学院理学療法学科 Department of Physical Therapy,Kochi Rehabilitation Institute
o 大倉 三洋 Okura Mitsuhiro 高知リハビリテーション学院理学療法学科 Department of Physical Therapy,Kochi Rehabilitation Institute


ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し、障害予防、パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている。しかし,その実施状況は決して高率ではなく、その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる。

そこで本研究は、健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に、ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した。
自転車エルゴメーターによる30秒間全力駆動を主運動として、その後10分間の休息を取らせることを2セット行った。その休息時に安静臥位、軽運動、ストレッチングを実施した.検討指標として筋柔軟性、血中乳酸値,作業能力、アンケートを取り上げた。筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり、ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく、ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した。

血中乳酸値の回復については,ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった。作業能力の回復については軽運動が比較的良く、ストレッチングが低い傾向を示した。このように、激しい運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく、効果的でない傾向を示した。

今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では、一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった。しかし、今回の結果は、ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない。


●期待されるセル・エクササイズ
私の経験では、多くのスポーツ指導者、トップアスリート、小学生、老人、一般女性にスポーツ指導(空手、バレエ、陸上競技、プロボクシング、キックボクシング、レーシングライダー、プロゴルファー、サッカー、プロ野球・・・)を行い 運動前後の静的ストレッチ禁止を指導して良好な成績を得ています。

準備運動としての静的ストレッチを禁止してから 障害が大幅に減少し、競技パフォーマンスが向上しバランスも良くなり柔軟性がかえって増加した報告が相次いでいます。

世界的趨勢を見ても 国内においてもリスクが報告される静的ストレッチを根拠なく行うスポーツ現場では見直しを求められます。
トップアスリートのトレーナーとしまして今後も正しいエクササイズ、セル・エクササイズ(正しいストレッチを含む身体機能向上運動)の普及に努めたいと思います。



セル・エクササイズ

現在、順天大大学大学院医学研究科において私と小林弘幸教授と共同で、エビデンスが確立されたセル・エクササイズの研究が進行しています。
筋肉の適度の弛緩と伸展。自律神経機能向上、脳、神経、筋肉の連動運動のスームズ化。
短時間のセル・エクササイズでコンディショニング、スポーツ後のケアが完璧に行うことができます。

近い将来、静的ストレッチに代わる 新しい準備運動(セル・エクササイズ)として普及することは確実と考えています。

トップアスリートからジュニア、高齢者まで行い驚異的な効果が得られています 「セル・エクササイズ」DVD付き書として好評発売中です。
どうでしょうか?皆さんも明日から静的ストレッチ・・・勇気を出して止めてみてください。

静的ストレッチを行っていた時に比べ きっと身体がスムーズに動くことに気が付かれることでしょう。



 


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