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2012年3月12日 月曜日

ストレッチは危険?そのエビデンスを探る!!

さかえクリニック 院長
 医学博士 末武信宏



幼少期から運動前にはストレッチをしなさいと必ず言われてきました。本当にストレッチは効果があるのかを検証した論文があります。

Effects of stretching before and after exercising on muscle soreness and risk of injury: systematic review.
BMJ. 2002;325:468.

(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この論文はこれまでの8つの論文をまとめたレビューです。対象人数が最大のものは17~35歳の兵役でのトレーニング生1,538人、同じく1,093人のものが含まれています。
調査では毎日のトレーニング前後に5~10分の準備運動(ストレッチング)をする群としない群に分け、80日間のトレーニング期間の筋肉痛、ケガの状態が評価されました。

筋肉痛は0から10までの11段階で評価されました。ケガは捻挫、疲労骨折、骨膜炎、アキレス腱炎、前脛骨区画症候群(前脛骨筋、長指伸筋、長母指伸筋とそれぞれの筋膜および前脛骨区画に関与する神経と血管に、何らかの原因によって障害が生じ、そのために組織内圧が亢進し、前脛骨区画内の循環系に不全が起こり、筋・腱・神経組織に機能障害や壊死が生じるものである)を対象とされました。

結果は、筋肉痛のスコアは両群で同じでした。上の図は80日間のトレーニング期間にケガをしなかった者の割合で、赤は1998年の調査でのストレッチング施行群、青は非施行群、水色は2000年の調査でのストレッチング施行群、オレンジは非施行群です。1998年、2000年の調査とも両群でケガが起きる割合は同じでした。
他の6つの調査でもほぼ同様の結果がでています。


運動前に準備運動(ストレッチング)をしても筋肉痛やケガを防ぐことはできません。

筋肉痛になるときはなる、ならないときはならない、ケガをするときはする、しないときはしないのです。

それでは実際のアスリートへのストレッチはどうでしょうか?
テニス選手のためのストレッチに関する最新情報

Pre-Tennis Stretching
常識を覆す静的ストレッチの最新情報です。(文責:スポーツ科学情報部会 高橋)
Coaching & Sport Science Review - Issue 43, December 2007
テニス選手のためのストレッチに関する最新情報
Pre-Tennis Stretching
Mark Kovacs and T. J. Chandler ( Jacksonville State University, USA)


<はじめに>
テニスは、大きな力やトルクの発揮をともなう中・高強度の運動が繰り返し必要とされるスポーツです(Kovacs、 Chandler、 & Chandler、 2007)。選手はこれらの大きな負荷にともなって生じる怪我を未然に防ぐために、練習や試合の前に時間をかけてウォーミングアップを実施します。

従来から実施されているウォーミングアップは、主に、テニスで頻繁に使われる筋肉を中心に静的ストレッチするというものです。静的ストレッチは、パフォーマンスを改善したり怪我を予防したりするものとして、何10年にもわたって、指導現場で実施されてきました。

1980年代と1990年代中頃の研究論文(Shellock & Prentice、 1985;  Smith、 1994)では、静的ストレッチはウォーミングアップとして良い効果をもたらすことが報告され、多くのコーチはスポーツ医・科学者のアドバイスに従って、選手に静的ストレッチを実施させていました。しかし、
最近の研究ではウォーミングアップで静的ストレッチを行うと、実際には運動のパフォーマンスが低下することを報告しており、従来のアドバイスを修正していく必要性があることを示しています。


<パフォーマンス>
1960年代の研究論文(DeVries、 1963)では、ウォーミングアップで静的ストレッチを実施しても、その後の100ヤードダッシュの結果に改善がみられなかったことを報告しています。それにもかかわらず、各種スポーツ指導現場では、未だにウォーミングアップで静的ストレッチを行うことが常識になっており、静的ストレッチはパフォーマンスを改善するもの、という考え方が常識となっています。

しかし、実際には
静的ストレッチは、筋力、スピード、パワーといったパフォーマンスを低下させるということが多くの研究結果から明らかになっています(Avela, Kyröläinen, & Komi, 1999; Cornwell, Nelson, Heise,& Sidaway, 2001; Cornwell, Nelson, & Sidaway, 2002; DeVries, 1963; Fletcher & Jones、 2004; Fowles, Sal.e, & MacDougal.l, 2000; Kokkonen, Nelson, & Cornwell, 1998; Nelson, Driscoll, Young, & Schexnayder, 2005; Nelson, Guillory, Cornwell, & Kokkonen, 2001a; Nelson & Kokkonen, 2001b; Young & Elliott, 2001; Young & Behm, 2003)。

テニスは筋力、スピード、パワーを必要とするスポーツです(Kovacs, 2006a)。それゆえ、これらの研究結果とテニスのパフォーマンスは強く関係します。また、静的ストレッチを実施した後に、下肢筋パワーの指標とされるデプスジャンプを行うと、そのジャンプ高(Cornwell et al., 2001; Young et al., 2003)は有意に低下することがこれまでの研究(Cornwell et al., 2002; Young et al., 2001)から明らかになっています。さらに、
静的ストレッチが筋力や筋パワーに及ぼす影響を検討した研究では、静的ストレッチを実施した後に、筋力や筋パワーが30%ほど低下したことを明らかにしています(Avela et al., 1999; Fletcher et al., 2004; Fowles et al., 2000; Kokkonen et al., 1998; Nelson et al., 2001a)。

これら研究結果はテニスコーチに対する大きな発見です。テニスコーチの役割は選手のパフォーマンスを向上させることにあります。コーチは選手に対して、練習や試合前に静的ストレッチを規則的に行わせているのであれば、選手は本来の70%程度の能力しか発揮することができないことになります。静的ストレッチを実施した後にみられるパフォーマンスの低下は、ストレッチの種類やストレッチをした後の活動様式に左右されるのかもしれません。また、
静的ストレッチをした後のパフォーマンスの低下は、ストレッチをした後60分間持続するそうです(Fowles et al., 2000)。

この結果は、コーチが認識しておかなければならない重要な情報です。静的ストレッチがパフォーマンスに及ぼす正あるいは負の効果は、関連する運動のスピードに左右されるのかもしれません。

Knudsonら(2004)の研究によると、静的ストレッチをした後に高速での動きがなされる場合にはパフォーマンスの低下は見られないこと、テニス・サーブの場合、そのスピードや正確性のどちらのパフォーマンスにおいても静的ストレッチによる負の影響は見られないことを報告しています。

そのため、静的ストレッチは高速での動きや正確性に関連する運動のパフォーマンスを低下させるものではないという見解もありますが、この理論は必ずしも支持されるものではありませんでした。
それは、優れたスプリンターの静的ストレッチと20m走における疾走スピードとの関係性を検討した最近の研究から明らかとなっています。この研究によると、
スプリント前に静的ストレッチを実施した場合、実施していない時よりも疾走スピードにおいて有意な低下がみられたことを報告しています(Nelson et al., 2005)。

したがって、下肢、体幹、上肢の筋肉を含む複数の筋群を使うテニス・サーブのような動作において、そのパフォーマンスの減少量を定量化することは難しいといえるかもしれません。しかし、
ウォーミングアップで静的ストレッチを行うことが、その後の筋力、スピード、パワーといった身体的能力を低下させるという事実は多くの研究結果から明らかです(Avela et al., 1999; Cornwell et al., 2001; Cornwell et al., 2002; DeVries, 1963; Evetovich, Nauman, Conley、 & Todd、 2003; Fletcher et al., 2004; Fowles et al.,2000; Kokkonen et al., 1998; Nelson et al., 2005; Wilson, Murphy, & Pryor, 1994; Young et al., 2001; Young et al., 2003)。

これらの研究結果の多くは最近のものであり、コーチはこのような新たな知見をなかなか理解することができないかもしれません。ウォーミングアップとしての静的ストレッチは、スポーツ指導現場では常識となっているため、この考えを変えるには時間がかかるでしょう。しかし、指導者、トレーナーともに、謙虚にこの事実を受け止めるべきです。



<傷害予防>
指導現場において、未だに練習や試合前のウォーミングアップで静的ストレッチを行っているのは、静的ストレッチがパフォーマンスを改善するもの、そして、怪我の危険性を減らすもの、という2つの誤った認識のためです。後者の思い込みは、おそらく、筋や腱がタイトな状態にある場合、関節の可動域が狭くなっているという意味で柔軟性が欠如しているという判断に基づいているのかもしれません(Garrett, 1993; Hunter & Spriggs,2000)。このような思い込みが、静的ストレッチが怪我の危険性を減らすという考え方をもたらしているのです(Garrett, 1993)。

しかし、最近の研究結果は、静的ストレッチが怪我の危険性を減らすという見解に異論を唱えるものであり、実際に反論を示しています(Comeau, 2002; Garrett,1993; Herbert & Gabriel, 2002; Hunter et al., 2000; Kovacs, 2006b; Levine, Lombardo, McNeeley & Anderson 1987; Pope, Herbert& Kirwan、 1998; Pope, Herbert, Kirwan& Graham, 2000; Shrier 1999, 2001, 2004; Shrier & Gossal., 2000; Yeung & Yeung 2001)。

1538名の男子陸軍新兵における下肢傷害の予防に関する研究では、12週間、運動前に静的ストレッチを実施しても傷害の発生率に変化がみられなかったことを報告しています(Pope et al., 2000)。ランニング障害の予防に関する2001にも及ぶレビューを調査しても、その多くが運動前のストレッチは下肢障害を予防するという見解を支持するものではありませんでした(Yeung et al., 2001)。静的ストレッチと怪我の発生率の減少との関係性について、関係があることを示した研究はほんのわずかで(Bixler & Jones, 1992; Cross & Worrell,1999; Ekstrand & Gillquist,1983)、大部分の研究や総説では関係がないことを報告しています(Andersen, 2005; Garrett,1993; Herbert et al., 2002; Hunter et al., 2000; Levine et al.,1987; Shrier, 1999, 2001, 2004; Shrier et al., 2000; Yeung et al., 2001)



<静的ストレッチの実用化>

結論は、練習や試合前のウォーミングアップで静的ストレッチを薦めたり、実施させたりすることは選手に害を与える。練習や試合前に静的ストレッチをすることで、パフォーマンスが向上したり、怪我の危険性が減少したりすることはありません。

国内でも運動後の静的ストレッチは筋疲労回復にも有効ではないという報告があります。

ストレッチングの筋疲労回復に関する研究
The study on effect of stretching to recovery of muscle fatigue


• 坂上 昇 Sakanoue Noboru 高知リハビリテーション学院理学療法学科 Department of Physical Therapy,Kochi Rehabilitation Institute
• 大倉 三洋 Okura Mitsuhiro 高知リハビリテーション学院理学療法学科 Department of Physical Therapy,Kochi Rehabilitation Institute


• ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し,障害予防,パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている.しかし,その実施状況は決して高率ではなく、その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる。そこで本研究は,健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に、ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した。

自転車エルゴメーターによる30秒間全力駆動を主運動として、その後10分間の休息を取らせることを2セット行った。その休息時に安静臥位、軽運動、ストレッチングを実施した。検討指標として筋柔軟性,血中乳酸値、作業能力、アンケートを取り上げた。筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり、ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく、ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した。血中乳酸値の回復については、ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった。

作業能力の回復については軽運動が比較的良く、ストレッチングが低い傾向を示した.このように,激運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく、効果的でない傾向を示した。

今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では、一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった。しかし、今回の結果は、ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない。


私の経験からも多くのスポーツ指導者、トップアスリート、小学生、老人、一般女性にスポーツ指導(空手、バレエ、陸上競技、プロボクシング、キックボクシング、レーシングライダー、プロゴルファー、サッカー、プロ野球・・・)を行い 運動前後の静的ストレッチ禁止を指導して良好な成績を得ている。準備運動としての静的ストレッチを禁止してから 障害が大幅に減少し、競技パフォーマンスが向上しバランスも良くなり柔軟性がかえって増加した報告が相次ぎました。

世界的趨勢を見ても 国内においてもリスクが報告される静的ストレッチを根拠なく行うスポーツ現場では見直しを求められる。

トップアスリートの指導者、トレーナーとして今後も正しいエクササイズ、セル・エクササイズ(正しいストレッチを含む身体機能向上運動)の普及に努めたい。

現在、順天大大学大学院医学研究科において小林弘幸教授の下、エビデンスが確立されたセル・エクササイズの研究が進行しています。

セル・エクササイズ

 


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