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2010年11月16日 火曜日

早く、キレイ、痛みなく治す 新しい創傷治療(実践編)


第1回目は、医学の常識が未だスポーツ界で非常識になっている傷のケアに関してのご紹介でした。


正しい傷へのケアは


1:消毒しない。

2:ガーゼを傷へ直接当てない。

3:クリームを傷口に塗らない。

4:汚れた傷は異物を取り除くため洗浄。

5:入浴制限は翌日から不要。縫合創も洗浄。

6:できる限りカサブタを作らない。


以上が傷のケア、治療法として正しい行為です。
これまで格闘家の皆さんは、傷は当然、格闘技につきもの、放置しておけば治る、消毒、ガーゼで大丈夫。とお考えではありませんでしたか。
大きく医学が進歩した今、最先端の傷のケアは短期間で驚異的な治癒が得られます。
しかも、治療には痛みを伴いません。


実例を掲載しまして傷を正しく治すとこんなにキレイに早く、痛みなく治ることをご紹介させていただきます。


私のクリニックには多くの多種多様な格闘家たちが試合や練習中の皮膚外傷で治療に訪れます。
私は、プロボクシングの試合ではセコンド、カットマンとして試合中の選手の傷の確認やケアも行います。
一次処置として大切な治療は、まず、止血です。
出血は、圧迫すればよほど太い動脈の出血でない限り止まります。
この場合、エピネフィリンという薬剤を使用して止血することもあります。
最近では、アルギン酸カルシウム塩という海藻から抽出した成分の止血材が素晴らしく有効です。
しかも傷を保護してくれる効果もあり、擦り傷や縫合創へ使用しておくと翌日には瘡蓋を作らず傷がキレイになっています。
 今回はその症例写真を提示します。


格闘家にとって最も厄介な傷が切創と呼ばれるいわゆるカットした傷ですね。
バッティングやパンチで眉毛辺りに切創ができます。
試合中、浅い傷であれば続行できますが、深い傷の場合は、ドクターストップとなり運が悪いとTKO負けになります。

 古傷がわずかなパンチで開いてしまい、試合がストップさせられることもあ  るでしょう。
プロボクシングの現状では、後楽園ホールでの試合の場合は、外科系の医師がすぐに対応してくれて傷口をしっかりとナイロン糸で縫合することが多いようですが、地方の試合では、医療用のホチキスで傷口を雑に留められ かえって傷口がめくりあがり悲惨な結果になっているケースを多々、経験しました。

 応急処置としましてもあまりにも雑でお粗末。
この状態を放置されれば選手生命にも大きく影響が出てくるケースもあります。
直ちにすべて糸やホチキスを外して再度、正しい縫合法で縫合を行う必要があります。
筋肉層が露出するまでの深い傷には真皮縫合してその上の表皮を縫合するテクニックを使用して傷の補強に努めます。(上瞼では真皮縫合は行いません)

手術以上に術後のケアも大切です。
感染したり血腫ができたり、異物が混入している場合は、大幅に傷の治りが悪くなります。
そのために縫合前には十分な洗浄が必要であり時には抗生剤の投与が必要です。
適切な治療が選手をTKOのリスクから守ることができるのです。
それでは実際の医療現場ではどういった処置を行うのか、あるプロボクサーの例をご紹介してみましょう。


<ケース1>
日本タイトルマッチを闘い バッティングでの傷が深く負傷判定となったプロボクサー。
試合中は、激しい出血で眼の中へ血液が流れ視野が遮られてしまっていました。
当日、試合後、後楽園ホールで一次的な縫合処置を受けました。
一般的な皮膚外傷の治療としては問題ありませんが、早期に復帰し試合を行うプロボクサーの場合はこの状態での治癒は、問題です。
そこで


1:ガーゼを直接、傷に当てられていたため傷とガーゼがしっかりくっ付いて剥す際、出血と痛みを伴った。処置が正しくありません。


2:表皮のみの縫合でした。かなり深い傷でしたので真皮縫合が必要でした。


3:縫合されていた糸を全て外す。


4:傷口を精製水で洗浄。


5:傷の状態を確認して真皮縫合を行い、創面をぴったりと寄せて表皮縫合。


6:縫合部が乾燥しないようにビタミンC誘導体が含有されたジェルを縫合部へ塗布。


7:若干の出血がみられたため 止血材であるアルギン酸カルシウム塩を縫合部へのせる。


8:フイルムドレッシング材で覆う。


9:その上から圧迫をかけるためのコットンを当てテーピング。(デッドスペースを作らないようにするため)


10:翌日、傷の状態をチェック。 瘡蓋もなくキレイな傷


11:翌日から傷を洗浄し、乾燥させないようにケア


12:5日目に抜糸


13:抜糸後は2-3か月テープで傷を保護。


プロボクサーは3-4ヶ月に1回の割合で試合を行うことが多いようです。
 3か月では傷は完全に癒合できません。
真皮までの確実な癒合は1-2年必要な期間です。
いかに早く治すか、キレイに治すかが選手生命も左右します。


<ケース2>
4回戦の試合中バッティングで負傷。試合後、医療用ホチキスで傷口を留められたプロボクサー。


1:大きく傷口がめくれ上がりずれた位置にホチキスの装着。
2:ホチキスを外し傷口を洗浄
3:めくれ上がりダメージされた組織をデブリードマン(切除)
4:真皮縫合を行い、傷口を補強
5:表皮を細いナイロン糸で縫合
6:縫合部をジェルで湿潤環境に維持させる
7:滲みだす血液を止血するためアルギン酸カルシウム塩を縫合部へのせる。
8:フイルムで傷を覆う。
9:上からコットンをはさみテーピングで圧迫。


こういった処置の間、一切、消毒は行いませんし、ガーゼを直接当てません。
洗顔も洗髪も翌日からOK。
汗臭い状態を我慢する必要もありませんね。
こういった正しい処置がいかに傷の治癒を促進するかがよくわかります。
いかがでしょうか?

少し難しいかもしれませんが、医学理論でも傷のケアに対しまして最近は大きく考え方も変わってきています。
是非、できる範囲で実践してみてくださいね。
その驚異的な治癒効果に驚かれると思います。


マメ知識
<カットマン> 
皆さんはカットマンという言葉を聞いたことがありますか?
ボクシングやキックボクシング、総合格闘技などのセコンドでカットした傷をインターバル中にケアするプロフェッショナルのことですね。

実は、私もプロのカットマンです。
医師で本格的にプロボクシングのカットマンを務めているのはおそらく世界で私だけではないでしょうか。
これまで公式戦で世界・東洋太平洋・日本タイトルマッチを含む200戦以上のセコンドとしてカットマンを務めてきました。
格闘技の試合にカットはつきものです。

1分間という短い時間でいかに止血して傷が広がらないようにするか。出血は視野を奪い大きなハンディを負います。
カットマンの技術が試合の結果を左右することすらあります。
PRIDEのリングで大活躍した米国人ジェイコブ・デュラン(Jacob Duran)氏は、映画ロッキーでもカットマンとして出演し多くのプロボクシング世界戦や総合格闘技の試合でも伝説のカットマンとして活躍しています。


また、亀田大毅選手がメキシコからカットマン ルベーン・リラ氏を内藤選手との世界戦のために招聘したことは有名ですね。
カットマンは試合中のトレーナーなのです。
以前は医療用の止血材であるボスミンを密かに使用していたカットマンがいましたが厳密には違法行為。医師以外が医療用材料で他人の傷のケアを行ってはいけないのです。
こっそりと血管収縮薬剤を使用して綿棒で圧迫、ワセリンを塗布して止血。が世界戦でも行われているのではないでしょうか。

薬剤を試合中に使用することには賛否両論があります。
現在は、アルギン酸カルシウム塩という海藻から抽出した止血用の綿のような素材がありこれをワセリンと混ぜて綿棒で圧迫止血すると驚くほど止血に成功することがあります。

つまり薬剤を使用しなくても創傷被覆材の一部とワセリンなどを特別な割合でミックスさせていわゆる秘伝の止血ワセリンをカットした傷に塗布して止血するのです。この技術は十分に世界に通用すると自負しております。
副作用も無く、いわゆるドーピング行為でもないのです。
止血には圧迫が一番。ですが、単純に綿棒で圧迫するよりはるかに有効です。


次号ではいろいろな身体のケアに関しましてさらに深く、役立つ情報をお伝えします。



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