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2010年11月16日 火曜日

再生医療を応用した新しい怪我や故障個所の治療


多くのアスリート、格闘家は怪我が絶えませんね。
トップアスリートであればあるほど必ず身体のどこかに故障を持っていることでしょう。
極限まで鍛え上げた肉体は強靭でありその一方、脆さを持っています。

私は、医師としてアスリートの身体能力を向上させるだけではなく、いかに故障した部位を短期間で治癒させ復帰させるプロジェクトをこれまでも研究チームを結成して遂行してきました。
その中でも画期的な未来の治療といわれる
再生医療を応用した新しい怪我や故障個所の治療を今回 ご紹介したいと思います。



 

その名もACR療法とも言われます、PRP(自己多血小板血漿)療法

聞きなれない名前ですが、自分の血液を20ccほど採血して遠心分離機で採血した血液から血小板を豊富に含んだ(自己多血小板血漿)血漿を抽出します。
この抽出した血漿を痛みや炎症、肉離れ、断裂、骨折した部位へほんの1ccほど注射するだけで驚異的な治癒が進むという再生医療治療です。


 

もともと、美容医学分野でしわを除去したり、たるみを改善させたり
肌質を若返らせる治療として全世界で普及していた治療法ですが、スポーツ分野で腱、靱帯、筋肉、骨などの再生にも驚異的な効果が医学的に実証され応用された治療法です

http://www.bloodcure.com/

 

なんと!あのタイガーウッズも靱帯損傷やアキレス腱断裂でこのPRP療法を繰り返し受けて短期間の復活を遂げたことを先日の取材インタビューの中で発表しました
海外では有名プロゴルファー、オリンピック金メダリスト、NBAプレーヤー、メジャーリーガーなど数多くのトップアスリートがこの治療の恩恵を受けて怪我から短期で驚異的な復活を遂げています
 

私はこの研究を数年前からスタートして現在は、順天堂大学大学院医学研究科においてアンチエイジング医療・再生医療のスポーツへの導入を進める中での重要な研究項目として位置付け臨床研究を 自らのクリニックで行っています。
一切のリスクを伴わないと言われているPRP療法ですが、日本国内ではアスリートへの投与を行ったのは私が初めてで慎重に大学と提携して効果やリスク、経過を観察、研究しています。

 

PRP療法について簡単に解説してみます。
 

自らの血小板を多量に含んだ血漿を特殊なキットで精製します。
私どもの使用するキットは、MyCells® と言われるものでイスラエル製です。
実はこのMyCells®が唯一 FDAで生体内への投与が認可されたキットです。

歯科用でも使用されているキットがありますが、同じPRP療法といってもキットによって効果に大きな差が出てしまいます。
血小板は血液を凝固させる働きがありますが実は、血液を凝固させるだけでなく大変重要な働きが血小板にはあるのです。

 

肘の静脈から20CCほどの採血を行います 遠心分離機で採血した血液を7分間3500回転で血液成分を分離させる
 
遠心分離後の血液 PRP療法に使用する製作キットであるイスラエル Kay light社のマイセルズキット、質の高いPRPが得られる。

血小板の中には、α顆粒という部分があります。この中には、EGF,PDGF,VEGF,TGF-βと言われる 成長因子(Growth Factor)が豊富に含まれています。

成長因子は刺激が加わると多量に血小板から放出されます。
成長因子は傷ついた組織を修復したり、感染を防ぐため白血球を呼んできたり、新しい毛細血管を造るシグナルを出したりします。
怪我が早く治ったり痛みが短期間で取れたり弱くなった靱帯や腱が強化したり組織が若返ると言った再生医療なのです。

このメカニズムは私が第1回と第2回のコラムで解説させていただいた創傷治癒理論が基になっています。
人間の修復力は凄いものですね。
これを応用すれば切断された指が再生したり、皮膚が壊死を起こして広範囲に潰瘍状態になった患部も短期間で治癒に至ります。

 

 
スプレー式の傷を乾燥させる消毒剤で傷が感染を起こし皮膚が壊死を起こしてしまった。 PRPという自己多血漿血小板を創部へ注射して治癒促進を図る
 
4週間後の傷の状態 肉芽が形成されしっかり上皮化が終了している  


PRP療法に関しまして質問と回答をまとめてみました。
 

(1) ACR, PRPってなんの略ですか?

A:ACR はautologus cell rejuvenation(オートローガス・セル・リジュベネイション)の頭文字のA とC とR を取ったもので、自分の細胞を蘇らせるという意味です。
PRPはplatelet, rich plasmaの略です。つまり血小板を多く含んだ血漿という意味です。

 

(2) ACR ってどんなものなんですか?PRP療法ってなんですか?

A:ACR は患者様ご自身の血液を使って、自分の力で皮膚の若返りを図る今世間で話題の再生医療のひとつ。ACRで代表的な治療がPRP療法。つまり自分の血液を使用して身体の組織の若返りを図るという新しい治療です。
 

(3) 血液の中の何が効果があるんですか?

A:血小板と呼ばれる成分を利用します。
 

(4) 血小板ってどんなものなんですか?

A:血小板は人間の体の中で、血を止めたり、壊れた血管や細胞を治す働きをしています。
 

(5) 血小板の何が効果があるのですか?

A:血小板の中からは成長因子(せいちょういんし)と呼ばれる成分が放出されこの成長因子がダメージを受けた組織を修復します。
 

(6) 成長因子がどのように細胞に働くのですか?

A:血小板が固まるときに出る成長因子が、直接弱った細胞の表面にくっついて刺激を与えます。そうすると弱った細胞が元気になり若返ります。これを利用して顔の皮膚のシワ、たるみを改善して若返りを図るのがPRP 療法です。この成長因子の効果を皮膚以外に応用して筋肉、腱、靱帯、骨などの故障を回復させます。
 

(7) いつから効果が出ますか?

通常は2 週間から1 ヵ月をかけて徐々に状態が改善していきます。 アキレス腱なのど痛みは2、3日は逆に強くなり1週間ほどで劇的に改善するケースがほとんどです。慢性の炎症でも急性の怪我でも対応できます。
 

(8) ステロイド注射と違いどうして時間がかかるのですか?

自分の細胞を元気にして若返りを図りますので、細胞が活性化されるまでの時間が必要になります。このために、時間が少しかかります。ただし、ステロイド注射は副作用もあり注射部位の組織を脆くしますが、PRP療法は注射部位の組織を強化し若返らせます。
 

(9) 効果はどれくらい続くんですか?

A:個人差がありますが、腱や靱帯の痛みなどは1回の治療で大きく改善します。理想的には3回1クールで治療を行うとよいでしょう。
 

(10) 効果をより向上させる方法はありますか?

A:、採血する時のコンディションが良ければ良質な血小板が採取できます。過労状態や多量の薬剤投与を受けている状態では良質な血小板採取ができない可能性もあります。また、治療後は局所へレーザー照射を行うとよいでしょう。
 

(11) 何回も注射をしても問題ないですか?

A:ご自身の血液ですので、問題ありません。
 

(12) 2回目の治療の期間は?

A:基本的には3 ヵ月以上空けていただきます。
 

(13) どの部位にも使えますか?

A:基本的には、腱、靱帯、肉離れした部位になります。骨折の治療と併用する場合は手術室での操作になり私のクリニックでは現在行っていません。
 

(14) 年齢によって効果に差がないですか?

A:基本的に血小板の働きが正常であれば、それほど大きな差はないと考えています。
ただし糖尿病やステロイドを長期内服されている方は効果が悪くなります。
妊娠中や悪性腫瘍の治療中、膠原病などの患者様には原則として施術できません。

 

(15) この治療の歴史はどれくらい?

A:歯医者や形成外科で使われてからは、10 年以上が経過しています。ただ国内ではアスリートへの投与は実験的試みが行われたばかりですが大きな可能性を秘めた治療法です。
 

(16) これまでに問題は無かったのですか?

A:アレルギーなど問題になった症例は皆無です。
 

(17) この方法はどこで開発されたのですか?

A:PRP療法によるアスリートへの治療は、世界に先駆けて当社の代表が独自開発をした方法で、現在、私のクリニックと順天堂大学大学院 医学研究科でも臨床試験、研究を行っております。
 

 (18) PRP療法を受けられない人はいますか?

A:妊婦、小児、心臓病、脳梗塞の既往のあるかた。肝臓の悪い方など、現在治療を要する方は治療を控えさせていただきます。
 

(19) 飲んではいけない薬はありますか?

A:血液が固まりにくくなるようなお薬を内服されている方はこの治療ができません。痛み止めとしてアスピリンの服用も止めていただきます。
 

(20)ドーピング行為になりませんか?

A:血液製剤でも身体能力向上を目的とするのではなく傷ついた部位の治療であり自己血液の血小板を主たる成分として使用するためドーピング行為とみなされないとのオフィシャルな見解が出ています。
 



―実際の治療方法―

(1) 採血はどこからするんですか?


A:通常は皆様がされています血液検査と同じで、肘の静脈から採血です。
 

(2) どれくらいの量の採血をするんですか?

A:原則としまして、20CC 程度です。
 

(3) 治療にどれくらいの時間がかかるんですか?

A:治療自体は注射のみですので5分もかかりません。
 

(4) 治療は痛いですか?

A:特殊な冷却装置で患部を冷却しながら、33ゲージという特別細い針で注射を行いますので、ほとんど痛みを感じません。
 

(5) 注射後は痛みや腫れは?副作用はありますか?

A:アキレス腱の場合は3日ほど強い痛みと若干の腫れが出現します。4日ほどで軽いトレーニングは可能となります。 靱帯は個人差がありますが、最低3日間はトレーニングを休んでいただく必要があります。副作用は理論的にもあり得ませんが多少の内出血や一時的な疼痛、腫れは必ず少なからず起こります。
 

(6) 日常生活の制限はありますか?

A:入浴も当日可能で、基本的には日常生活の制限はありません。当日の飲酒は控えてください。
 

(7) 通院はありますか。

A:通院は原則不要です。

 
国内でアスリートとして最初にPRP療法を受けたのは、アジア大会でも銅メダルを獲得し、アテネ、北京五輪陸上男子110MH日本代表、元日本記録保持者の 内藤真人選手です。


北京五輪前からアキレス腱の強い痛みに苦しみ満足に練習ができませんでした。
北京五輪後もアキレス腱の故障から精彩を欠いていました。
PRP療法をご紹介すると是非この臨床実験にご協力いただけるとの回答があり、2回のPRP療法を行い、痛みもほぼ消失して全力で練習が行えるようになりました。

ただし、1回目終了後は当日から、アキレス腱の強い痛みと腫れで歩行も困難で3日目までは安静が必要でした。
4日目からは痛みもほぼなくなり1週間目からは徐々に強度を上げて普段通りの練習ができるまでに回復しました。
その後、1か月経過した時点ではこれまで不可能だった全力での練習がほぼ痛みが無く可能となりました。
数日の痛みと腫れ以外は副作用は一切認められません。
経過良好です。

 

 先日の日本選手権ではスタートの出遅れが響き5位入賞となりましたが、順調に回復し来年の世界選手権、2年後のロンドンオリンピックに狙いを定め日々トレーニングに励んでいます。

今季の国内での大会でも間違いなく好成績が見込まれます。
現在も多くのトップアスリートからのオファーもあり今後の研究に期待がもたれます。



株式会社 ベリタス様、順天堂大学大学院医学研究科、総合診療科 小林弘幸教授
順天堂大学医学部付属順天堂医院 整形外科の皆様のご指導、ご協力でPRP療法が国内で普及し故障に苦しむ多くのアスリート、格闘家の福音となることでしょう。
私も微力ですが格闘家の皆様のお力になれますよう研究に精進いたします



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